金沢の改修工事 index

金沢のお茶屋について

お茶屋ってお茶を飲むところではなくて、芸妓さんをあげて遊ぶ場所を意味しています。一階は茶の間や台所のある生活の場になっていて、二階が遊ぶ場所となっています。茶屋街の通りに面した二階の座敷が前座敷。裏の庭側の二階が奥座敷となっていて、奥の座敷の方が格が高く、天井高などでもそれが見て取れます。茶屋街の真ん中当たりにある『志摩』はなかなかお茶屋として美しい平面を持っています。木工事の細工も丁寧で時間とお金をかけて造ったんだなぁと感心するつくりです。

平面を見ておわかりのように、お茶屋の特徴は二階の座敷に押入がないこと。これは遊ぶための空間であって生活の空間ではないからです。町家と大きく違うところでしょうね。もう一つは座敷に『控えの間』が付くこと。この控えの間で芸妓さんが踊りや太鼓を披露したりします。二階の縁は雨戸一枚で外部と仕切られます。普通の感覚だと雨戸の内部側にガラス入りの建具が入るはずですが、金沢のお茶屋では、雨戸一枚しかありません。町家では二階の階高が低いのが特徴ですが、お茶屋は腰高の雨戸が入るため二階の階高は高くなっています。そのため町家と茶屋は立面でも明らかに違う印象を与えています。

もともとは、外壁や『きもすこ・きむすこ』と呼ばれる線の細い格子は弁柄柿渋塗りだったのですが、近年では殆どの建物が白木になってしまっています。木材の耐久性を上げるために弁柄を塗ってあったことから考えると、むかーしは杉を使っていたのではないかと想像します。しかし、現在の外壁材は青森ヒバを使っているところが多く、それだけでもかなりの耐久性があるため好みで白木になってきたのでしょうか。文化財を保護していこうと考えている行政の金沢市としては、昔のように弁柄を塗って欲しいけれど、強制できませんからねぇ・・・と、街に住む方の意識が変わることに期待しているようです。

基本的にお茶屋というのは、芸妓さんは置屋さんから呼んできますし、料理は仕出しです。そういう点から見ると貸しスペースという感覚でしょうか。人数に応じて芸妓さんや帰りのタクシーの手配までして貰える点からみるとプロデューサー的役割も持っているようです。請求書が後からくるので、信用で遊ぶわけですから一見 ( いちげん ) さんお断り・・・ということらしいのです。
『・・・ようです』とか『・・・らしい』と表現しているのは、僕は信用のない一見さんでして、人から聞いた話だからです。どうやったら一見さんから、一見さんでない人にバージョンアップされるかはわかりません。何度も行って顔を売ることなんでしょうけど・・・。

この仕事のために、お茶屋さんを理解しなくては・・・と、連れていって頂いた印象では・・・。女の子のいるスナックやバーに行って、聞きたくもない他人のカラオケを聞かされ、カラオケの本をポンと渡され、『歌いたくない』というと、『あーら、こちらおとなしいのねぇ』なんてバカにされ、『なんで、お客が気を使わなくっちゃぁ、ならねぇんだ』と心の中で思うことを考えると・・・・よほど話題が豊富だし、話は面白いし、芸は見せて貰えるし、太鼓もたたかせて貰えるし・・・で、想像したよりも楽しかったから、お金を貯めてまた行ってみたいと思う。こういう文化が無くなっていくのは寂しいから、これを読んでいるあなた ! そう、あなたです。是非、一度体験してみて下さいな。


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