レコンポーザ for Windows95 Release3
(カモンミュージック)
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レコンポーザ95は、1996?年に発売された、MIDIデータを作成、演奏するためのソフトウエア(シーケンサ)です。
世界的に見ると、シーケンサにはいろいろな種類のものがあるようですが、とりあえず国産でしかも参考書物などが十分にあるものは、割と限られます。そのなかで、このレコンポーザの特徴たらしめている要素は、なんと言っても「数値入力」でしょう。
最近のほとんどのシーケンサでは、五線譜に見立てた画面に、マウスで音譜を貼付けていくという、きわめてGUI(graphical user interface
早い話がマウスで画面上のものをなんかする方式)的なものです。その中でレコンポーザは、五線譜に音譜を貼付けるのではなく、数字(文字)データとして音符を入力していくという方法を守り続けたシーケンサであるといえるでしょう。
最近は新バージョンなどは発売されていませんが、アップデートのサポートは十分に行なわれていますし、販売についてはパッケージを簡素化した簡易パッケージ版が14,700円で購入できます。また、機能を限定したLight版も6,300円で購入できますので、これから新規購入する際に何も問題ないことはもちろん、ソフトウエア自体の設計がしっかりしているのか、最近のPCでも問題なく(少なくとも我が家では)動作しています。ただし、古いバージョンを入手した際には、アップグレードは不可欠です。古いバージョンによる不具合のうち目だったものは、一部のMIDIインターフェイスとキーボードにおいて正しく認識できませんでした。もしこの症状でお悩みの方は、迷わずアップデートのページへいきましょう。
さて、この数値入力とはいかなる方式なのか。
簡単に説明すると、「ドレミファソラシ」を「CDEFGAB」に置換え、入力していく方式です。実は、一昔前のPCは、すべてそうだったのです。いまだPCM音源のMIDI機器がPCの周辺機器として認知されていなかった頃、PCには「PSG」や「FM音源」といったものが搭載されていました。そしてPCに標準で搭載されている「BASIC」で音源を制御するときに、やはり「CDEFGAB」を使ったのです。このようなものを「MML(Music
Macro Language)」といったりします。この流れを受継いでいる、と考えて、おそらく差支えないでしょう。
では、数値入力には、いったいどのようなメリットがあるのでしょうか。私がレコンポーザを使用する上で、間違いなくメリットだと思う点のみあげることにします。
数値入力の最大のメリットは、「情報量の多さ」だと私は思っています。
MIDIにおいて、音譜を表す要素は3つあります。 1.高さ。 2.強さ。 3.タイミングと長さ。 実は、楽譜形式のシーケンサでは、これらを同時に表示することがきわめて難しいのです。たとえばドの高さの4分音符があるとしましょう。画面上には4分音符のドが表示されています。しかし、それ以上のことはわからないのです。どれくらいの強さなのかがまずわからない。また、たっぷり演奏するのか、スタッカートのように演奏するのか、それもわからない。
ところが、レコンポーザでは、これらの情報が一目でわかるようになっています。以下に例を示します。
Note | ST | GT | VEL |
---|---|---|---|
C4 | 480 | 450 | 80 |
音符はこのように表されます。左から説明すると、C4というのは、4オクターブ目のドの音を表します。ちなみにピアノの鍵穴のあたりのドの音です。
STとは、その音符が占有する長さを表します。ちなみにデフォルトでは1920が1小節=1分音符になっているので、480はちょうど4分音符1つ分ということです。つまり、4分音符1つ分で次の音符にいくよ、ということです。
GTは、実際に鳴らす音の長さです。480ある長さのうち、450だけならすよ、ということです。一般には、普通に楽器などを演奏すれば、音と音の間はちょっとだけ開きます。この場合だと、480中の最後の30は音の切れ目にするよ、と考えればよいでしょう。ちなみにGTをSTと同じにすれば、音は切れ目がなくなります。いわゆるレガート奏法になります。また、STをたとえば240にすれば、スタッカートのようになります(実際には8分音符になるだけですが)。
VELは、音の強さを表します。127までの数字ですので、80は中くらいよりもちょっと強めくらいです。
GUI形式のシーケンサでは、これらの情報は、たとえば音符をクリックすると隅っこのほうに別枠で表示されるとかの方法をとっていることが多いです。確かにこれでも確認は出来ますが、たとえば音符1個だけ設定が狂っていても、おそらく気づかないでしょうし、曲全体としてどのような流れになっているかは全くつかめないといってもいいでしょう。
なお、レコンポーザには、5線譜に入力する機能はありませんが、入力したデータの横に、その5線譜を表示させることは出来ます。ですから、入力済みのデータにたいしては数値の羅列でわけがわからん、ということはあまりありません。
数値入力では、編集がものすごくラクです。なぜかというと、データそのものは数字の羅列だからです。つまり、テキストやCSVのように、カット&ペーストもできますし、音符の挿入もデータを1行挿入するだけです。これがGUI形式だと、おそらくマウスでクリックもしくはドラッグ、でも1画面に収まりきらない範囲をドラッグするのは難しい、いざ貼付けようと思ったらマウスカーソルの位置が悪くて1拍ずれた、とかいろんなコトが起こりえます。
これとあわせてのことになるのですが、レコンポーザはマウスをほとんど使いません。使ってもよいのですが、使う必要がほとんどないのです。ごくたまに使うと言えば、ウインドウが行方不明になって、他のウインドウを最小化したり、目的のウインドウを最大化したり、ということくらいです(これらすら、キーボードでやることは可能です)。とくに、楽譜を打ち込むときとかは、極力手の位置を動かしたくないものです。そんなときにはマウスを使わずにオペレートできることが大きなアドバンテージになります。
データが数値なので、自分で直接数値を変更できます。なので、音符単位での細かい編集がたいへんにラクです。もう少しわかりやすく言うと、自分で責任を持って編集ができます。何かをしようと思ったらアプリケーション側で勝手に書き換えられてわけがわからん、ということはありません。
さて、このようにたいへん優れた方式である数値入力ですが、やはり大きなデメリットを抱えています。言うまでもなく、「わかりにくい」「とっつきにくい」「めんどくさそう」ということです。
しかし、これらのことを解消するための工夫が、随所にちりばめられています。この項ではそれらを紹介します。
先ほど申し上げたとおり、音符の長さは数値です。しかも4分音符が480です。ちょっと普通の感覚では理解しがたいでしょう。
それでは、曲を入力するときには、音符の長さを頭の中で変換して、1個1個入力しないといけないのか・・・もちろんそれでもかまいません。というか、場面によってはそうせざるを得ないことはしょっちゅうあります。しかし、そのような場面はあくまでも例外で、通常はもっと楽チンです。
実は、音符の長さを設定するショートカットが、ファンクションキーなのです。音の高さを入力した後に、たとえばF5を押すと、4分音符になります(ST=480,GT=450.)。F4なら付点4分音符、F3なら2分音符、というかんじです。つまり、実際に入力する際には、音符の高さを指定し、そのあとに長さを指定する。ということになりますね。
あれ?じゃあ強さはどうなるの?
このあたりもよく考えて作られています。レコンポーザの音符入力の大原則として、「特に指定しなかった要素は、直前のデータのものを引継ぐ」というものがあります。つまり、VEL=80で最初の音符を入力したのなら、その後に入力する音符はすべてVEL=80になります。
じつは、音符の長さについても同様です。つまり、最初に8分音符を入力すれば、次の音は特に指定しなければ(ファンクションキーを押さなければ)やはり8分音符になるのです。だから、ソナチネなどでよく見られる「ドソミソドソミソ」というようなパターンであれば、音の高さを入れていくだけでOK、ということです。
先に言うべきだったでしょうか。入力デバイスとして、MIDIキーボードが使えます。
マニュアルやサイトを見る限りは、USBタイプのものも使えるようです。今話題の、綾戸智絵さんがコマーシャルをしているピアノロールも使えました。ただしピアノロールにはオクターブ移動機能がないので、入力デバイスとしてはちょっと不便ですが。
で、MIDIキーボードを使っての入力は、いろいろな方法があります。まず思いつくのはリアルタイム入力です。しかし、これはできる人にはできるし、できない人にはできません。
私が使っている入力方法は、「MIDI&fkey」と表記されている方法です。これは、MIDIキーボードを押さえながらファンクションキーを押すと、その長さでその音符が入力される、というものです。この方法だと、和音もそのまま入力できます。コイツが楽チンなんだな。
で、私ははじめ、この方法はめんどくさいだろう、と思っていました。なぜなら、音符1つごとにファンクションキーを押さねばならないからです。
ところが、実際にやってみると思いのほかラクであることがわかりました。というのは、GUI形式でよくあるマウスで音符の長さを指定するものと違い、ファンクションキーでは「画面を見る必要がない」のです。つまり、ある程度入力しては確認のために画面を見る、という程度でよいために、例え音符の長さが途中で変わっても視点を移動する必要がありません(ファンクションキーの位置は手探りでわかりますので)。また、休符はキーボードを押さずにファンクションキーだけを押せば、その長さの休符が入力されます。もしもリアルタイム入力するほどの腕前でなく、しかもキーボードを併用できるのであれば、間違いなくこの方式をお薦めします。
さて、上記のようにリズミカルに音符を入力できるのですが、音の強さを変更せねばなりません。また、スラーやスタッカートのような曲想もつけたいかもしれません。このようなときにどうするのか。
レコンポーザの優れている側面の1つに、「データ値の一括変更、一括調整」があります。つまり、変更したい範囲を指定し、何を変更するのかを入力すれば、一斉に変換されるのです。この値は絶対値で変更することも、元データにプラスマイナスで変更することもできます。また、線型に値を変化させることもできます(すなわちクレッシェンドやでクレッシェンドなどができるということです)。
レコンポーザの最大の問題点は、ソフトウエアそのものではありません。
1つは、マニュアルが貧弱であるということです。というのは、オンラインヘルプが充実しているからなのですが、オンラインヘルプというのはことのほか使いにくいものです。
そこで、レコンポーザを使用するにあたって、ぜひこれを読むといいよ、という書籍を紹介します。
音楽之友社 レコンポーザ95で始めるDTM 藤本 健 氏
メディア・テック出版 MIDIで音楽極楽入門ガイド 夏山 音彦 氏
ただし・・・いずれもすでに絶版であり、書店での購入は望めないかもしれません。通信販売のサイトにも、どうやら在庫がないようです。もしかしたら、田舎の古本屋などを巡った方が、出会える可能性は高いのかもしれません。
結論から申し上げます。マウスのない時代からPCをさわってきた、という経歴の持ち主であれば、間違いなく「買い」でしょう。また、GUI形式のシーケンサで、なんかかゆいところに手が届かない、という体験をしたことがあれば、これもぜひお薦めします。なにしろ、あまり現実的ではないかもしれませんがレコンポーザであれば、1小節で19連符などという奇抜なことだって簡単にできるのです。
また、自分で作曲、編曲をするよりも、楽譜の打ち込みをしたい、という方にもお薦めできます。なにしろ画面に視点を動かさなくてもよいというのは、楽譜打ち込みでは大きすぎるアドバンテージです。ただし、MIDIキーボードは必須といえるでしょう。
さいごに、私の使用環境を載せておきます。ご購入の際の参考になれば幸いです。
項目 | 実態 |
---|---|
PC | DELL DIMENSION 8300 & Sony VAIO Type U VGN-U50 |
MIDIインターフェイス | Roland EDIROL UA-20 & YAMAHA UX-16 |
MIDI対応音源 | Roland SC-55mkII |
MIDIキーボード | Roland PC-200MKII |
OS | WindowsXP Home Edition |