観た建築の感想 |
宿泊したのは、1992/05/04でこのときは会員制ホテルで、我々はビジター料金で泊まりました。その後、川久の経営が悪化し銀行が経営権を握ったため、今では旅行会社を通じてかなり安く宿泊できるようで、お得だと思います。超高級会員制ホテルだった時の記録です。
予想はしていたものの、ご立派な車ばかりが止まっていて入っていくのに少々(いやすっごく)びびる。殆ど33ナンバーで、その中でもそんじょそこいらの33とは違うのがザコザコ。たまーに5Xナンバーをみつけ「けっ・・・」と笑ってみるものの、しっかりベンベだったりして。とても国産では入っていけない雰囲気。でもみなさんシックな色ばかりなので、真っ赤なユーノスは国産といえどしっかりアイドルしている。ドアボーイも「正面に置かせていただきました」だって。ロールスのすっげぇ車体の長い御車2台。これは川久のもので、もしかすると頼めば乗せて貰えるのではなかろうか、とおもうが・・・言えなかった。前庭の広場に入ると、我々のためにバグパイプの演奏が始まり、その音楽の中をロビーへと。革張りのハイバックチェアに座って、冷たいウェルカムジュースをいただく。「おかみでございます」とご挨拶を受けて、我々の客室係橘さんを紹介して貰う。「用事があればなんでも言いつけて下さい」とのこと。 私たちの部屋は「宝生」。リビングの壁は白っぽいが、ソファをグリーン、クッション7ヶが全部色違いでポイントになっている。窓に向かって、オットマン付のでっかいソファは、景色を眺めるもよし、本を読むもよし。スィートルームにいることを満喫できてしまう。風呂は体を伸ばしきって入れる長さの浴槽で、洗い場にはスノコがあって、外で体を洗えるところ等なかなかの気配り。洗面道具は、資生堂。ホネケーキの石鹸からムース状のシェイビングローション・ボディシャンプーなんでもあり。大浴場に着ていけるバスローブは、男女柄の色違いで made in Italy for Kawakyu とオリジナル。パジャマも男性は上下に分かれていて、2段階でパンツの紐を絞められるようになっていて、トイレの時は、一つ目をはずせばずらないで用がたせる、なかなか、考えてあるデザイン。女性はネグリジェ型。室内履きは革製で足の甲に kawakyu の刺繍。ショップで15,000円で売られているイタリア製。ブルジョアおばさんが「この名前入っているといやぁね」といっていた。えっ刺繍が入ってないと買うんかいおまえら ??? 大浴場へ専用のエレベーターで。(非常時は消防用のエレベーターになるようだけど・・・そんなことできるんだね)浴室は、1階が木仕上と2階が石仕上の2つが、夜中1時間の掃除の時間を境に、男女入れ替わる。ちょうど菖蒲湯の時期で菖蒲の葉とヨモギを縛って入れてあった。 従業員は皆さん若い。以前、高級旅館だったときには仲居さんと呼ばれる中年女性が多かっただろうに、ばっさり??そこまで割り切らないとこんなホテルに生まれ変われたんだろうね。スタッフの躾はいきとどいていて、皆さん必ず立ち止まって、声を出して挨拶する。それぞれの係りごとに、ユニフォームがあってどれもいい。バーのバニーガールのコスチュームは、品が良くてウサギの耳の形も可愛く、写真を撮らせて貰う。堀専務の奥さんのデザインとのこと。 ロビーはどれだけいても飽きない空間。床のモザイクは圧巻で美しい。モザイクの左上に施工した人のサイン。照明にもしっかりyamo氏のサインが入っている。自分の仕事に誇りを持っていれば当然のことでしょう。ガラスのぶつかり止め・エレベーター廻りのガラスにフジの模様。川久の紋の「登り藤」とのこと。床モザイクの花も藤でした。ともすれば成金趣味になりかねない円柱・金箔貼りの天井。それがこうも落ち着けるのは・・・うまいなぁ。内容があまりにも濃いものだから、ホテルから外に出る必要もないし、ホテルを後にするときも、1泊しか滞在していないのが嘘のようで、全く退屈することがなかった。 dinner シャンパン
こういう建築を造れるのはまだ日本も捨てたもんじゃないと感じました。建築雑誌の評価はそんなに高くなかったようですが、写真で見るのと実際見るのは全然違う。こんなホテルが銀行の手に渡るのは悲しいものがあります。サービスというソフトと建築というハードが一体になって初めていいホテルなのに・・・ |
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