観た建築の感想 |
内藤氏の建築を観るのは初めてで、かなり期待しての見学です。観光バスが何台も駐車場に停まっていて凄い人でした。廻りの公園を含めて建築家がデザインしているので、よく見られる建築と土木設計の違和感も感じられず、羨ましい限りです。駐車場から広々とした公園を歩かせることによって、山々に合わせた屋根の勾配を感じることができました。アプローチが長い建築はそれだけで贅沢な気分が持てて好感が持てます。
屋根の大きさに対してのガッタの大きさが気になりますが、連続屋根にしたとき、谷部分に溜まる雪を考えると仕方のないことなのでしょうね。
エントランスを入ったところにある受付は、Uの字状になっているために、入るなり裏が全部みえてしまうのが気に掛かります。ある意味親しみ易くも感じられるのですが・・・。 Yチェアなどの有名な椅子のミニチュア版が子どもコーナーに置いてあったのですが、著作権はどうしたのでしょうね。そういう既製品があるのでしょうか ? 可愛いので、欲しくなってしまいました。だれか、知っています ? カフェテリアは、外にもテーブルが並べられて気持ちがいいのですが、でてくる軽食は、レンジでチンしたものでちょっと悲しい。折角だから本物を出せばいいのにネ。 裏側に、コの字型に腰壁をたてて空調の屋外機を置き、廻りに植栽を配して隠しているのですが、台数分ぴったりで、その後増設された屋外機がその外に置かれてしまい、竪樋に似せた配管の中に冷媒管とドレン管が通されていました。設備関係のスペースをぎりぎりまで切りつめるために、増設や更新に対処できないものを作家事務所の建築で見ることができますが、そういうところを見てくることも建築見学の大切な勉強の一つだと思いますが、如何でしょうか ? 床は無垢の木を張っているのですが、屋外に換気口(40φくらいの小さいもの)が、あるところを見ると転ばし根太で施工しているのだと思います。しかし、換気口があまりにも小さいことと、その位置が地面ぎりぎりなのはまずいような気がします。いくら庇が出ているといっても・・・。 作家事務所には珍しく、木製サッシュ+ペアガラスで開口部の性能にはお金が掛かっていました。 現在、増築中・・・のようです。工事をしていましたが、仮囲いで中はみえませんでした。
2000/03/02up 先日02/25に金沢で行われた新建築社主催の内藤氏講演会の後の懇親会で質問してみました。背景になる山の稜線と屋根の勾配は計算してのものかどうかを・・・。『計算して合わせたわけではないが、設計前に敷地に立って肌で感じ脳裏に焼き付けたものが、屋根勾配になってでてきたのではないか・・・と思う。だから、敷地を実感しないまま設計してしまうことがあるコンペなんかだとこういう偶然は生まれないだろうね。偶然といっても体感から来る必然的な偶然ともいえるかも知れないね。』・・・とのことでした。計算して合わせたっていうよりずっと格好いいじゃん。建築家・・・は、肌で感じないと・・・なのです。 金沢の中村家の住宅を設計されたときに、最初に、和室の通されて中村梅山氏のお茶碗で抹茶をだされたそうです。手に持ったときの重さといい肌触りといい、口当たりといい、素晴らしい物だったと内藤氏は仰っていましたが、ある意味・・・これがわからないようじゃ、うちの設計は頼めないよ・・・という試験のような気がしないでもない。・・・と僕は感じました。それが、僕だったら、どう反応していたのでしょうか ? 肌で感じられたのでしょうか ? とってもそんな自信はないなぁ。それには、いい物に触れる・・・しかないよね。 |
元、長野オリンピックの選手村だったところですよね。何人もの建築家がやっているだけあって、歩いていても風景が変わり凄く楽しかった。私の好みは元倉真琴さんの高層棟でした。シンプルなのですが、センスが光っているように思えます。遠藤氏のフレームにバルコニーを入れたものは一層おきに大きいバルコニーがあり、その大きさは使いでがあるようなのですが、椅子やテーブルを出してある家はなくて、どう使っているのだろうと不思議でした。でも、上の階から丸見えなので、有効利用しにくいのかも
?
バルコニーの手摺に樹脂性のものを使っているところが多かったのですが、和泉は、『樹脂だとなんとなく気持ち悪くて布団を干す気にならない』と言っていました。汚れ具合は同じだと思うのですが、感覚として・・・という意味です。それなら集合住宅の景観を悪くする『布団干し』がなくなりそうなものですが、しっかり、干されていました。陽への要求の方が強いということですね。 |
夜、長野の街を歩いていると『平安堂南千歳店』2階アートサロンと3階ホールで『吉坂隆正展』が建築士会全国大会に合わせてやっているのを見つけました。迫力のある図面を観ることができて、今回の旅行では、建築を観るよりも一番の収穫だったように思えます。 |
あまり標識らしきものがなくちょっと道に迷ってしまいましたが、地図の写真を撮ってきたので、後日アップしますから、それを頼りに行ってみて下さい。私達が行ったときには、4人くらいのグループと学生さんが一人、中年の夫婦が一組が見学に来ていました。
学生さんに感想を聞くと、『すごくよかった、曲面はスタディを繰り返したんでしょうね。』というのが最初の言葉でした。話をしていると彼は『マルチメディア工房』等も観ているのですが、ここと同じく模型的な造りで、かなり汚い感じだったそうです。 私は妹島氏の作品を初めて観るのですが、考え方の新しさについてはすごいけれど、建築というハードウエアとしての造り方には、疑問を抱いていました。雑誌の写真で観るとすごく綺麗・・・線が少ない・・・ディテールレスに見えるのです。納まりがうまくてディテールレスにみえるのか、または、ホントにティテールがないのかどちらなんだろう・・・と。 材料の違う物がぶつかるときには、そこにディテールという『納まり(おさまり)』を考える必要があります。材料の温度や水分による伸縮とか径年変化による狂いを吸収するにはどうしたらいいかを、納まりとして考える必要があり、それを『必死でやっているよ』って顔をした納まりになるのは格好悪いので、『んなの、楽勝』って顔をしながら見えないところできちんときめている・・・ってのが、格好いい、ディテールがないようで、実は考えてある・・・ディテールレスに見える・・・のだろうか、それとも考えてないのだろうか・・・と、妹島氏の作品を見る度に思っていました。 残念なことに、私にとってはコンセプトとカッコだけの建築にみえました。今年竣工したばかりなのにもう塗装が膜状に剥がれ、展示室のPタイルは紫外線と温度変化のためガラス際は浮いてしまい 10年後の姿が見えるようでした。一階ピロティの柱は樹脂製の材料で囲い半透明に見せているのですが、いつまでその樹脂が姿を保つことができるでしょうか ? 所詮、建築物は恒久的なものではなくて、更新していくものだという観点では、樹脂を使おうが紙を使おうが、ダメになったら取り替えればいいサ。と考えるならばそれもアリでしょう。しかし、私の価値観ではもう少し、永く持たせるのが建築だと思っています。そこが、インテリアデザイナーと建築設計者の違いだと思っているのですが、妹島氏の作品ではその価値観や恒久性にまで踏み込んで、『いや、建築なんてそこまで求めなくてもいいじゃん、肩肘張らずに・・・』と言っているのでしょうか ? 展示品は展示ケースに入っているから大丈夫なのか不思議なのですが、二階の展示室内に入った瞬間、塗装の溶材の臭いがプンとしていました。お客さんが来たら管理人さんが鍵を開けてくれるのですが、自然換気が無いせいで、内部の空気はよどみペンキの臭いがたちこめて、外の空気が綺麗なだけに、展示室内の空気環境は最悪でした。展示品に影響がなければいいのですが・・・。現在、金沢市に妹島氏が美術館を設計しているのですが、こういう設計では困りものですね。もうすこし、展示品のことを考えた材料選びなどをして欲しいものです。 何故か、プロパン庫があり 6本もボンベがありました。曲面の壁で囲ってあり全体の中でデザインされていて、素人にはまさかそれがプロパン庫とは思う人はいません。一階の外構は砂利敷きなのですが、どうやってボンベを運ぶかに私は興味があります。もう一つの興味は、何の熱源かです。管理室の湯沸のためだとすると、そんなの電気でいいじゃん。砂利の上を運ばせるのか ?。ということになります。とすると、資料館のエアコンの熱源なのでしょうか ? 灯油にすれば長いホースでタンクにアプローチすることもできますが、ボンベだと持っていく必要があります。砂利の上を引きずってでしょうか ?建築家は建物のことだけを考えればいいのか・・・と思ってしまうのですが ? プロパン屋さんがどうアプローチするか考えたことがあるのでしょうか ? きっと、サンダーバードの基地のように管理人室でスイッチを押すと、砂利敷きの外構がパックリ割れて、ボンベ台車が通る道が迫り上がってくるとか・・・うわぁ、格好いい。それでこそ、建築家 !!! 建築は、性能を満たしてから、初めてデザインのことを語るべきでしょう。デザインが先にありきでは、一般の方(建築関係以外の方)の共感を得ることは難しいと思います。日本建築学会賞をとる実力のある方は、そういうことを押さえての建築家であって欲しいものです。 |
内部のコンクリート打ち放しは、10年経ったと思えないくらい綺麗でしたが、外部の屋上庭園
? の腰壁などの打放しの汚いこと !!! 屋上の床仕上げは押えコンクリート金ゴテだと思いますが、腰壁同様に殆ど黒色状態に汚れてしまって、廃墟といってもいい感じです。『コンクリート打ち放し』が好きな学生は一度訪れて、なれの果てを観るといいのではないでしょうか
?
内部階段の勾配のきつさには驚きです。公共施設でこういうことが許されるのでしょうか ? 住宅の階段のようで階高が大きい分二階へ上がるのに疲れてしまう。かなり変です。 |
諏訪インターを出てから右へ。高架を上がる前の信号を右折。突き当たりの生コン屋の信号を右折。信号一つ通り過ぎて、ちょっとひろみになっているところを左に上がったところ。
話好きの管理人 ? さんが、建物と展示物の説明を丁寧にしてくれます。藤森氏が案を出し、内田氏が実施設計や現場監理をするといった二人三脚的に造られた建物です。この建物を造るに至った経緯や材料の選び方などを書いた藤森氏の本を読んでいたので、ガラスや屋根の鉄平石を観ながら『なるほどね』と納得しつつ見学することができました。小さいけれどこだわりの一品という感じです。でも、普通の方が観ると、どうみても『ほったて小屋』にしか見えないのですが・・・。 鉄平石は昔からこの辺の屋根材などに使われていたのですが、重いせいもあって次第に使われなくなり職人さんも殆どいなくなりました。残念なことです。 |
26年前の建物ですね。神長官守矢資料館から松本へ行く途中、諏訪湖のほとりで見つけることができました。古く汚れていますが、画一的な鉄筋コンクリートの小学校とは違った雰囲気ですぐにわかりました。鉄骨が錆びてあまり補修をかけていないようなのが、寂しかったです。後から増築された物置の外壁が、本体と同じ様な煉瓦的に合わせてあったのが、笑えました。直方体の教室棟と斜め屋根の棟がくっついているのがちょっと
?
メンテナンスをどうやっているのかわからないのですが、26年でこの姿になるのは考えものです。せっかく作家事務所に設計を依頼したのだから、一度きちんと改修工事をやって欲しいなと思いました。道路を走っていて目につくフォルムを持っているのですからもったいないと感じます。 |
今回見学した建築の中では一番のお気に入りです。郡山市立美術館が大味だったので、これも観に行こうか迷ったのですが、行って正解だったと思っています。ところどころにディテールが盛り込まれて、神経の行き届いた設計になっています。玄関上の菱形の格子組交点の水たまりには、排水用の
V字型の金物が入れられていたり・・・。吹抜部分の菱形格子組部分のガラスはペアガラスを使ってありました。低層部は普通のシングルです。
玄関ドアの方立にカバー付のインターフォンが埋め込まれています。カバーは方立と同じ木製なのですが、これを外すとインターフォンが入っているって誰が気付くのでしょうか ? やり過ぎって感じ ? 低層部和室の障子が入っている敷居には樹脂製の『敷居滑り』が貼ってあるのですが、紫外線と温度変化に負けたのでしょうか、パリパリにめくれ上がって折れていました。これだけしっかりと本物を使った建築なんだから、堅木を埋め込んでやるべきだったのではないでしょうか ? こういう事を観ると『樹脂』を建築に使うことの短命さを知ることができます。 6年でこういう具合になるのですから・・・。 そういう幾つかの細かい欠点を観た上でも、この建築は私の興味をひきますし、丁寧に設計されている事が伺えます。しかし、派手さがないので若い人には受けないかも知れませんね。そんな風潮に悲しさを感じてしまいます。 |
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