耳管開放症の治療法のまとめ
耳管開放症についての文献的紹介と自験例について
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・成因
これは耳管周囲の粘膜下組織の萎縮をともなう。 2.妊娠 サーファクタント様物質が新生児の呼吸を促進するために必要であり、妊婦において増加する。 そして、このサーファクタント様物質が耳管の開放圧に影響する。
Malm,L. The Influence of Pregnancy on the Eustachian Tube Function in Rats. 山口はエストロゲンが関与して、脂肪代謝が亢進し、耳管周囲の脂肪組織が 消耗するのではないかと推察。 山口 展正;耳管開放症に関する病態および疾患.Otol.Jpn.5:199-203,1995 3.耳管周囲の交感神経異常 耳管周囲の交感神経興奮により分泌の低下をきたす。
山下 敏夫 耳管における副交感神経分布 見るからに神経質そうな、交感神経のかった方というのは、診察いすにすわられ、 こちらから耳がつまるでしょうと当てることが出来るようなことすらあります。
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・症状
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・検査
microscopeのもとでvalsalvaをすると鼓膜は容易によく動きます。手を鼻から離すと すぐにもとへ戻るものは開放の度合いが大きい。
純音聴力は正常がほとんどですが、低音部に骨導の低下が見られるものもあり、
これについては議論されているところです。
第9回日耳鼻中国四国連合地方会(s.58.11.12)
最近これを報告した文献もでました。
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・治療
1.加味帰脾湯
漢方で、石川 滋;耳管開放症に対する薬物療法の試み-加味帰脾湯の使用経験- 私もごく軽いものには使ってみていますが、割合効くようです。 2.耳管内注入
*Bezold液 サリチル酸と硼酸末を1:4の割合で混合
*ヨードグリセリン
*小川液
著者は側管付き鼻咽腔鏡で注入しています。例の尾関先生の鼓室造影の方法から
その後松本憲明先生が新しく考案したファイバースコープがあります。
これについて、直に山口先生と話をしました。それによりますと、
“キシロカイン麻酔および耳管咽頭口観察時に一過性の貧血の状態になり胎児への
影響をおそれているからです”とのことでした。妊婦の一過性の貧血というのは
鼻咽腔の耳管咽頭口あたりをさわったときの軽いショック様状態を指すようです。
*ルゴール噴霧 3.耳管咽頭口に操作を加える方法
*Pulec
現在Teflone pasteは、これの注射がint.carotid art.には入り、cerebral thrombosisを
起こした。そして、製造社はTeflon pasteのこの方法への使用を禁じた。
との理由でもう売られておらず、私が残りを高研から買い占めたのが残っているだけです。
*アテロコラーゲン
自保のホルダー(永島で試作し、その後改良が加えられて製品化されました)で
対側から挿入した鼻咽腔ファイバーを固定し、耳管咽頭口を明視下におき、高研の
ヤング喉頭注入器で前唇を主に何カ所かに分けて0.5cc位を注入。これは大島式です。 *ヂアテルミー
malleable ureteric diathermy pfobe を耳管咽頭口に挿入してdiathermy coagu-
lationを行う方法。 4.Bluestoneの方法
これは少し変わった方法で特殊カテーテル,medicant intravenous indwelling
cath-eter with flared tip.を鼓室から耳管内に挿入。 5.手術治療
*tensor veli palatini m. のtensorをhamulusの前方へ移動させる。
*tensor veli palatini m.のLig.をhamulusの外側で切断。 Hamulusを骨折させる方法をどこかでみたのですが、記録していません。
*金子 明弘ら;耳管開放症の外科的治療 Otol. Jpn.7:461,1997
*tragal cartilage片を経鼓膜、耳管口に挿入する。 経鼓膜でtragal cartilageをくさび状にして耳管口に挿入する方法で、 ご本人に会ってお聞きしました。簡単に出来そうです。私も手ぐすね引いて待っている方法です。
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以上今までに、文献を渉猟して集めていたものですが、開放にもいろいろの程度があり、
それに応じた方法をとっております。
まず、通気カテーテルでステロイドを注入してみる。これで症状がとれるようなら、
加味帰脾湯を追加。これで2.3週間様子をみる。 耳管閉鎖不全は、形態的、特に耳管咽頭口部の異常によるもの、何らかの原因で耳管粘膜の 分泌が低下したもの、いわゆるfloppy tubeなどが考えられ、これらのうち、症状を 呈するものを耳管開放症と言ってはどうかと思っています。あくまで推測ですが 耳管の奇形もあるのではないでしょうか。1998.10
大島昭夫先生(a-oshima@po.harenet.or.jp) ありがとうございました。
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