吉川くんのこと

 私が教員なりたてのときに、吉川君という男の方といっしょに勉強してたんですけど、その方は小さいときに高い熱が出て、手足が動きにくいという障害がありました。で、どんなふうに動きにくいかというと、私たちは手をこう曲げるとき、こっちの筋を伸ばそうという命令が脳から届くんだそうですけど、吉川君はそういう命令がなかなかうまくいかなくて、両方の筋がいっぺんに縮んじゃったり、いっぺんに伸びちゃったりするらしいんですね。だからとなりに人がいると思ったら、縮めておこうと思ったら逆に両方とも引っ張っちゃって、ガーンてたたいちゃって、ここの顔を骨折させちゃったりしたこともあるんだそうです。
 だからそういうふうにしたくなくて、吉川君とても優しいから、手とか足をひもでぐるぐるまきにしばってあったんですね、包帯で。で、「ほどけそうになったらきつく縛って。」って吉川君いうんですけど・・・。

kakkoさん 吉川君と一緒に、四月に遠足に加賀の中央公園に行ったんですけど、そこで一年生くらいの男の子が「お兄ちゃんの手とか足どうしてそんなふうになってるん?」って聞いたんですね。で、その男の子は自分の思いを聞いてくれたわけで、吉川君もどうしてそういうふうになったかっていうことをお話ししようとしてたんですけど、そこに、たぶんその男のお子さんの先生だと思うんですけど、女の方が来られて「養護学校の子の方に行っちゃだめって言ったでしょ。」っておっしゃって、今度はその一年生くらいの男の子がその先生に「あのお兄ちゃんどうしてあんなふうな足になってるん?」って聞いたんですね。そしたらその先生は「あんたも、人をけったりして悪いことしたら、あんなふうになってしまうよ。」ってそんなふうに言われたんです。

 私すごく悲しくて、吉川君はどう思っただろうと思って、涙が出て止まりませんでした。で、すぐ追いかけようとしたら吉川君は「泣かなくていいよ。僕らはこういうこととっても慣れてるから平気やし、人をけることのできる足も持ってないからいいんやよ。」って言ってくれたけど、私はあんなに小さなお子さんと一緒にいる先生がそんなこと言っていいはずない、とかって怒ってたんですね。

 でも、家へ帰ってからよく考えたら、「あー私も同じだな。」って思いました。

 大人はわりと簡単に、「お米を踏んだり粗末にしたりすると目がつぶれてしまうよ。」とか「お勉強できんかったら養護学校行かんならんよ。」とかやっぱりあの、いい子に育ってほしいと思っていうんですけど、「おばあちゃんけったら足がくさってしまうよ。」とかそういうことをね、やっぱりどうしても言ってしまうと思うんですね。そういう言葉は、でも、やっぱり人を傷つける言葉だし間違ってると思います。

 じゃあどうしてそういう言葉を私たちはよく使ってしまうのかなあ、って思ったら、それは小さいときに障害を持った方と接する機会がなくって、障害を持った方も持ってない人も変わらずに同じように、悲しいことがあったり、うれしいことがあったりして、でもお互い様で助け合って生きてるってことに気が付く機会に恵まれなかったからじゃないかなっていうふうに思いました。だから私は、たくさんの人ができるだけ小さいうちに、世の中にはいろんな方がおられて、でもみんな素敵で、みんなお互い様に助け合ってるんだよって知って欲しいなと思って、子供たちの作品展をさせて頂いたり、こうやってお話をさせて頂いたりってことをしています。

 じゃあ、あのーもうひとつ。よろしくお願いします。

クレヨンは色のかたまり。
これからかく絵のかたまり。
僕らだって
明日の夢のかたまりでできてるんやなあ。

    

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