IQなんて

 大ちゃんはこんなふうに色々素敵な詩を作るんですけど、大ちゃんが有名っていうか本を出していただいたり、テレビで紹介していただくようになってきて、それでいろんな方が大ちゃんのことを知ってくださるようになって、新聞社の方やテレビの方やそれから大人の方が、大ちゃんについていろんな質問を私にしてくださいます。
 そのときに「どうしよう。どう答えたらいいだろう。」ってちょっと戸惑ってしまうことがあるんですね。それはどんな質問かというと

 「大ちゃんの障害名は何ですか?」とか
 
「大ちゃんのIQはいくつですか?」っていうそういう質問だと、私「どうしよう。」って思うんです。

 どうしてかっていうと、こんなに素敵な詩を作る大ちゃんを、たとえば知的障害があるとか、知恵遅れであるだとか、精神薄弱だとか、そういうようないろんな言葉で大ちゃんのことを紹介したくないって、そういう思いがあるんですね。
 でも、それは大ちゃんだけじゃないんです。養護学校の子供たちみんなみんな本当に素敵で、素敵な絵を描いたり、素敵な文を作ったり、素敵な笑顔があったり、そういうみんなの素敵さが、知的障害とかそういう言葉では表現できないなって思うんですね。

kakkoさん で、だったらどうしたらいいか・・・。IQもそうなんです。IQですけど、私IQあんまり好きじゃないんです。どうしてかって言ったら、IQじゃあまりその人のことを伝えられないってよく思うんですよね。で、IQは中学一年生で計ることになってるので、大ちゃんと私も計ったんですけどそのときに、「目は見える。耳は?」っていう問題があるんですけど「聞こえる」っていうのが正解なんですが、大ちゃんは私に「大丈夫や。大丈夫やって。」って言いました。「そうじゃないの大ちゃん、目は見える。耳は?」って聞いたら、私が心配してると思ってまた、「やまもっちゃん、大丈夫やって。」っていうんですね。でもそれじゃ正解にならないので「そうじゃないのよ」って。本当は『こんなことはしてはいけません』って書いてあるんですけど「目は『見る』でしょ。耳は?」「大丈夫やって。」って言ってね、×になっちゃうんですけど、そんな「聞こえる」っていうよりももっとね、素敵な答えを答える大ちゃんが×になっちゃう。そういうものの積み重ねで出たIQって、何だろうな?って思うんですね。

 もう一人まりちゃんっていう大好きな女の子がいました。その女の子とIQを調べてたときに「遊園地に行きました。迷子になりました。あなたはどうしますか?」っていう問題があって、まりちゃんは「なってみないとわからない。」私は「泣く。」って答えたら両方とも誤答例に入っていました。正解は「係の人にいう。」でした。
 それから「あなたがお買い物に行きました。お母さんが、絶対買ってきてね。っておっしゃったんですけど、行ったらお金が足りませんでした。あなたはどうしますか?」っていう田中ビネーの問題があるんですけど、私は「あきらめる」、まりちゃんは「買わない」。両方とも誤答例でした。正解は「お母さんに電話をする」とか「取りに帰る」っていうのでした。でも、それって知能なの?知能指数なの?性格じゃないの?って私は思ったんですね。
 で、そんなふうにして調べたIQが、50なり80っていうのはやっぱり一人歩きしてしまうんじゃないかな、と思うんですね。あの子はIQ80だっていったときは、それなりのなにか具体的なイメージが起こっちゃうじゃないかな、と思うんですね。それと例えば、ここの大きな会場におられる皆さんで算数のテストをしたときに、0点から100点までの人がおられたとして、21点から下の人は障害がありますよ。21点の人は障害がありませんよって、そういう線って引けるだろうかって思うんですね。

kakkoさん たとえば手足が不自由ってこともそういうことじゃないかな。ここまで不自由だったら障害があるとかないとか、そういう線って引けないし、視力もそうだし聴力もそうだけど、でも障害者とか健常者っていう言葉は、分けてしまってる言葉じゃないかな。あの人は障害者ですよ、っていうひとくくりの中に入ってるんじゃないかなって私は思うんですね。

 で、確かに、今は瀬領に行っているんですけど、手足が動きにくいっていうことはあると思うんですけど、でも一緒に勉強しているようちゃんは手足が動きにくいっていうそういう個性もあるけど、とっても優しいとかっていう個性もある。やっぱり個性なんじゃないかなと思います。で、大ちゃんは計算が苦手だっていう個性があったり、人とお話するのが苦手っていうのもあるし、犬が大嫌いとかとっても優しいとか詩を書くのが上手とかいうそういう個性があるからそういうふうに並べていけるようになったらいいなというふうに思います。

 それから自転車に全然乗れないとか、すごいあわてものだとか、それは私のことなんですけど、そういうふうにいろんな個性の人がいると思うんですね。だからみんなそういういろいろな個性だっていうふうにしてお話をしていければ、大ちゃんが言ってくれたみたいに「みんないろいろ違うけど、みんなで雪の景色を作っていけるかな。」っていうふうに私は思いました。で、やっぱり大ちゃんはときどき、何か心の痛みを感じるということがあるんだと思います。で、こういうふうな詩を作ったんじゃないかなと思うんですけど、現実に学校の子供たちといて、とてもつらいなと思うこともあります。

    

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