FARLAND PARTY
ひびきつくねの ファーランドパーティ
Last Update : 2002.08.17

Copyright T.Hibiki 2002

北へ 〜桜前線を越えて〜

→ひとつ前に戻る

 初めてのフェリー、初めての「北端」を目指して……♪

・ 北へ 〜桜前線を越えて〜 ・

= あらすじ =
 本編の主人公 筑音が、過去に訪れたことのある北海道に再上陸します。
 函館、札幌、旭川、そして稚内。
 どこまでも北へ、北へ……道は続いているのです。

プロローグ

 2000年4月29日。ゴールデンウィークです。
 今回の旅行のコンセプトは「北へ」です。このタイトルは、日本の北へ行くことであれば、本州の北へ行くことでもあり、いくつかの国道の北へ行くことでもあります。さまざまな北を制覇するために、いつも通り、マイカー「せらちゃん」を走らせるのでありました。

 そんなわけで、今回の旅行の日程を次のように立ててみました。

4/29(祝)
 出発。青森まで、国道8,7号線制覇。
4/30(日)
 フェリーにて北海道へ。札幌まで、国道5号線制覇。
5/1(月)
 宗谷岬へ。夜明けの宗谷を見たい!
5/2(火)
5/3(祝)
(北海道内をうろちょろ)
5/4(祝)
 フェリーにて青森へ。福島まで、国道4号線制覇。
5/5(祝)
 遅くならないうちに帰る。


「コンセプト」なんて難しい言葉を使いましたが、ただ宗谷までの道のりがずっと北上だっただけで、意味を知って使った言葉ではありません(汗)
 また、旅行記ではありますが、ちょっと小説風味を効かせてあります。わたし主人公が、どのようにこの旅行をしていったのかを、普段とは違った方法で報告しています。

 さて。主人公の道すがら、いったいどんなことが起こるのでしょうか……?



第1章  Route8

 朝。
 俺は、目覚ましを止めたあと30分ほどまた眠っていた……(爆)眠い目をこすり、体を起こす、4時半。
 昨日のうちに用意しておいた着替えや音楽CD、地図、デジタルカメラと充電電池、PHS本体と充電器、ノートパソコン接続用ケーブルなどをマイカー「せらちゃん」に積み込む。またほんの数分前までもぐっていた毛布に、電源を入れっぱなしだったノートパソコンも同じく車に積んでいく。
 俺の名は、響 筑音(ひびき つくね)。23歳。ソフトウェアを開発する会社に勤める、ごく普通の会社員だ。
 今日は4月29日。12年前までは天皇誕生日だった、祝日、みどりの日。ゴールデンウィークの始まりだ。俺はこの9連休で、前々から計画していた、北海道への旅行を実行に移そうとしていた。しかし行くだけでは旅行の途中で飽きが入ってしまうのは目に見えている。いくつかの通過地点をたどって行けば、最後の自宅到着までメリハリのついた流れで進めるはずだ……そう考えていた。
 また、せらちゃんことトヨタ車セラ。ドアが斜め上に動く変わりモノだ。俺と一緒だ(謎)

「いつ帰ってくるの?」
「5日の夕方くらい」
 目が覚めたらしい母が聞いてくる。俺は最後の荷物確認をしながら素っ気なく答えた。
 ハンカチ、靴下、PCカードなど、忘れていた荷物を所定の袋やケースに収めていく。そろそろ出発準備は完了だ。
 それにしても、まだ眠いのか……右目がなかなか大きく開かない。そう、前日も休みを取ったはずの会社に夜遅くまでいたのだ。もう少し考えて作業をしないと、いつか身体を壊してしまうだろう……まるで他人事のように言っている自分がいる……。

 つい1ヶ月ほど前に交換した車のバッテリーの調子は良好で、キーを軽くひねるだけで小気味よいエンジン音をその耳にすることが出来た。そうだ、この旅行で3000km近くの走行距離になるはずだ、帰ってきたらオイル交換も忘れずに行わなければ。
 いつの間にか、時刻は午前5時を過ぎていた。俺は車のボンネットを開け、エンジンルームを再点検する…… 汚い(汗)外側を洗うのは当然として、最近エンジンルームの細かい拭き掃除をしていなかった。帰ったらしなければならないことがこれでまた一つ増えたわけだ。
「さて、そろそろ行くべ〜」
 車に乗り込む俺を見て、母は家の中に戻っていった。まだ5時半になっていない、もう一眠りするのだろう。
 そして俺は独り。
 進路を北に、北海道に向けて出発したのであった。

 やばい、右目が重い、痛い。4日前、火曜日くらいから痛いとは思っていたが、まさか目もらい(ものもらい)ではあるまいな……(激汗)
 家から1kmほど進み、朝日が痛くて一度家に戻る(ぉ)冷蔵庫に入れたままの目薬を取り出し、点眼する。出だしは悪い……。


 金沢の競馬場を横目に、俺は国道8号線に向けて進む。直接R8に出ても良かったのだが、普段走り慣れた場所だ、特に制覇に支障があるわけではない。こんなところで時間をかけるのはもったいない。たんぼ道。夜中や早朝でない普段でも交通量の少ない道をてこてこ進む。たまに農家のおっちゃんの運転する軽トラックがちんたら走っているので、その脇をすいすい追い抜いていく。いい感じだ。
 R8は金沢、津幡を越えると、県境の倶利伽藍(くりから)トンネルを抜け、富山県に入る。倶利伽羅峠は中学校の社会の授業でも出てくるが、実際に国道を走るだけでは単なる山道だ…… 富山県小矢部(おやべ)市。ここには大学時代の友人の実家もあり、よく訪れた場所だ。トンネルは、倶利伽藍を含めて3つある。俺はいつも、倶利伽藍トンネルだけでなく、この3つを越えると「富山に入ったなぁ」という意識になる。「本当はここで切り替わるのだが、自分ではこっちを区切りと考えている」といったことはないだろうか?


「あ! 新湊にも道の駅があったんだ!! 知らんかった〜(@▽@;」
 あまりにいつも通る道なために、記憶になかったのが道の駅新湊(しんみなと)。富山市のお隣(石川県側)に位置する場所だ。道幅の広い国道を降りるとそこにある。家から1時間もかからない場所にあるために休憩場所にもならない、そう思い俺はそこを通り過ぎる。何事もなかったかのように。
 あらかじめ断っておくが、俺は道の駅マニアではない(爆)これから先、何十ヶ所という道の駅に立ち寄っているが、写真を撮っているが、マニアではないことをご了承いただきたい。(ってあたふたしているあたりきっとやばい(^^;)
 新湊は金沢から50kmほどの地点である。さらにR8を進むと、富山市を抜け、滑川(なめりかわ)市に入る。ここは、一昨年の8月、俺が初めてインターネットのオフ会(っぽいもの)を体験した場所でもある。実際にインターネットで知り合った人と会ったわけではなく、遠くから眺めていただけだが。現在も滑川市ではR8、滑川バイパスの整備を行っているはずだ。これが完成すれば、R8は滑川でコの字を進まずに済むのだが。早い完成が待ち遠しい。


 来ました、親不知(おやしらず)。高速道路では結構有名かもしれない地名だ。そう、高速道路。富山県の朝日(あさひ)から新潟県の上越(じょうえつ)までそれなりに長いトンネルが26本もある。しかも高速道路にも関わらず片道1車線、対面通行なために最高速度が70km/hと、それまで時速100kmなどで走っていた一般の運転手には不思議に感じる&うっとうしくもある場所だ。もちろん、高速道路に限らず、R8でもトンネルが続く。日本海側、すぐそばに海が見えるにも関わらず山道で、時速30km規制の場所もある。高速道路の一部は海の上を走っている。明るい時間帯で天気が良ければ、なかなか景色のいい場所なので、山道の途中「天下の険」に遊びに来る際に、ちらと横目にするのもいいと思う。
(補足:2001年夏には、片側1車線区間はなくなっており、最高速度70km/h制限もなく、片側2車線ですいすい走れるようになっていた)


 うはっ! やばいやばい、俺の前を走っていた乗用車が張っていた白黒車の連中に止められた。どこにレーダーがあったのやら……そういえば、対向のトラックがライトをぺかぺか鳴らしていた。あれはきっと、「ネズミ取りやってるぞ〜」の合図だったのだろう。俺は、その意味に気が付かなかったが、「なんかせらちゃんにまずいとこ、あるんかな……?」と少し不安になっていたのでスピードが落ちていたのだ。本当にやばかった、あと少しスピードが出ていたら、免許取消への道を……(汗)


 最初の道の駅を発見。市振の関(いちふりのせき)、と言う名前だ。
 考えてみると、今年2000年、去年の2月もこの道を通っているはずだ。なのになぜ、その時に気が付かなかったのか……実は、この「道の駅」という正しい知識を得たのは、去年、それから5ヶ月後の7月なのだ。それ以前に、ある女の子から「どこそこに道の駅があるからそこで休むといいね」、という言葉を聞いてはいたのだが、当時「道の駅……(トラック数台停まったらいっぱいになるくらいの広さの)パーキングエリアかな?」と思っていたのである。パーキングエリアという意味では間違っていないのだが、意味がわからないままにしていたのだ。去年2月とゴールデンウィークの時も、道の駅を利用すればもっと楽なドライブができたはずだったのだが……少々(彼女に対して)申し訳ない気分になってしまった。
 話を戻そう。
 気になっていたことが一つあった。2月にせらちゃんのワイパーゴムを新しいものに変えてから、なぜかびびり、振動が激しくなった。動かすたびに、ごごごごっ、と音を立てるのだ。ガラスに傷が付いているわけではないが……始め、油膜でもあるのかとガソリンスタンドで油膜取りを使わせてもらって綺麗にしたのだが、結果は変わらなかった。こうなると、ワイパー本体のネジの締め方のような細かい問題になってくるのでディーラーか詳しい人に聞かなきゃいけない、そう思っていた。しかし、ここでひとつ試してみたものでびびりがなくなった(本当の解決ではないので仮、ということになるが)。
 曇り止め。スプレーで泡を出し、乾いたタオルで拭き取る。別段変わったふうもない市販品だ。車内のガラスを拭いていたときに、ついでにフロントガラスも拭いてみたところ、意外な結果をもたらしたので、俺は結構いい気分になった。
 解答はこの旅行記の最後にしよう。

 ……おや? なぜこんなところに大きな井戸が?(注意! 市振の関で大きな井戸なんて見てません(^^;)最近作られたのだろうか、綺麗な木の蓋がしてある。直径は1m以上あるだろうか。
 俺はなぜか好奇心にかられてその中をのぞいてみようと思った。
 俺は蓋を開ける。
「(にこやかに)ばぁ♪」
 俺は蓋を閉めた。背を向け、せらちゃんに向かって歩き出す。
 風もないのに、なぜかバタバタンと派手な音を立てて蓋が横に転がった。新しい蓋なのに、傷を付けるようなマネはするべきではない。
「ちょ、ちょっと待ってよ!なんで閉めちゃうのよ!!」
 俺は洗ったタオルを絞りながら歩いていた。しかし、その行く手を一人の女の子にさえぎられてしまった。「逃げる」を選んで、回り込まれてしまったかのごとくだ。
 俺の身長が170cm弱なので、背丈はだいたい150cmくらい、黒のTシャツに膝が隠れるかどうかという長さの水色のキュロット姿。髪は肩の高さよりもう少し長く、幼さが残る顔立ちだ。
「なんなんだいったい……」
 俺は額に手を当て目を閉じる。
「あ、わたしがこれからあなたの旅のお供をすることになった、ひびきつくね(爆)。つくちゃんなんだよ〜、だいまおなんだよ〜(>▽<)/」
 なんと!? 誰が予想できたであろうかこの展開!!(ばかっぽい(^^;)

 半ば強引に助手席に乗り込んできたつくねに、俺は呆れながらもなぜか不思議な印象を覚えていた。ってこのあたり適当(ぉ


 さて、先に進もう。
 次の道の駅、能生(のう)。ここは、晴れていれば実に楽しい場所だ。
(というよりも、結構楽しんだ(@▽@;)
 広場と公園があり、遊ぶための遊具や施設があるのだ。俺は童心に帰り(笑)ジャングルジム(?)に登る。こんなところに登るなんて、それこそ何年ぶりだろう……こんな時に、子供心を忘れたくない、としみじみ思ってしまう。
 と、そこで懐かしく思ったものが、これ。縄に掴まり、向こうのタイヤにぶつかるまでぎゅいーーーーんと、滑車がロープの上を走るものだ。俺が覚えているのは、15年ほど昔、地元の健民公園にあったものだ。同じように、縄に掴まる台があり、向こうにタイヤがある。何度も何度もみんなで遊んだ記憶がある。俺はそんな記憶をたどりながら、実際に縄に掴まった。

 ぎゅいーーーーーーーん……

 それっ! タイヤにぶつかる前に、前に飛び出せ!!

「うぉー! めっちゃおもれー!!(>▽<)/(爆)」
 そこらへんの子供が、ぼくもやりたーいと母親に言っている。
「もう一回だ!(更爆)」
 調子に乗っている俺がいる。

 ぎゅいーーーーーーーん……
(今度はぶつかっても縄に掴まったまんまでいるぞっ!)

 どんっ!
 びちゃっ!!(ぉ

 がーん(T▽T)タイヤに、昨日の雨の水がたまってた(T▽T)つべたい……(;;)

 少し悲しくなった俺は(爆)その場を後にした……。

「筑音さんって、バカ?」
「やかましい」


 能生の次の道の駅は米山(よねやま)。特になし(ぉぃ)そうだ、アイスを買った。
 それだけらしい……テニスコートや公園もあるので、近場の人なら結構遊べる場所ではある。しかし、R8沿いなのだが、少し淋しい感じの道の駅だった。


 そして、道の駅黒崎(くろさき)だが
混んでるね
「人いっぱい(T▽T)」
 新潟ふるさと村では、ちょうど「花いっぱい紀行」というイベントが開催されていて、ものすごい人と車の量……写真を撮って一休みしたい俺にこの車の量は正直いやな気分だった。
 そんな気分は駐車場に車を停めてほんのちょっと、5分ほどだけで済んだ。いや、そんな暗い気分は、たくさんのチューリップを見て吹っ飛んだのだ。

 チューリップ畑(畑と言うには狭いかもしれないが)。赤、黄、白、ピンクといった色のチューリップが、俺を迎えてくれた。しばしぼーっと……眺めていた。ムッとしていた顔つきも、見た瞬間に笑みに変わっていた。
(一人で来るのはもったいないな……女の子と、一緒に来られたらいいな……)
 俺は苦笑いしながらそんなひとときを過ごした。
「わたしがいるでしょ?」
「心を読むな」
「細かいことは気にしないっ♪」
「置いていくぞ」
「気にしてよ」

 普段は、イベントのない時はどんな場所なのだろう? 街に近い道の駅は、昼間に人が少なくなることはないのかな。俺は駐車場の車の中で、慌ただしく行き交う車を見ながら、そんなことを考えていた。


 そして。
 時刻は14時。新潟県新潟市、本町(ほんちょう)へやってきた俺は、R8制覇の証明を探した。
『道路元標』(どーろげんぴょー)
 一桁国道ならすべてあるのではないかと思う。実際に俺がすべてを確認していないので大きくは言えないが、その都市の、国道の出発点に、「ここが出発地点だよ〜」という文面を記した石碑があるのだ。ここ新潟の本町は、R8だけでなく、R7,17,49の起点でもあり、その他多くの国道の原点でもある。こういった道路元標を探すのが、車での旅行の楽しみではないかと思う。
 ここでも断っておくが、俺は国道マニアではない(爆)確かに一桁国道制覇、という夢はあるが、断じてマニアではないことを、一部(一部?(^^;)ご理解いただきたい(@▽@;


章末。
 このように、ただひたすらR8を進んだわけで、特別変わったことはない\( ̄▽ ̄; 章分けしたことをいまさら悔やんでいるが(ぉ)このまま進むことにしよう。
 もうひとつ断っておくが、小説ではない(@▽@; あくまで、旅行記であるがゆえ……(小説っぽくならなかった言い訳(滅))

 それにしても、いつのまに、「一桁国道制覇」が「一級国道制覇」に変わってしまったんだろう〜? わっかんないなー(^^; ちなみに、一桁国道でも、元標、ないところあるのですよ。R2,3分岐点 門司とか、R6仙台とか。せめて「ここから」「ここまで」っていう看板があればいいのにな〜 といつも思う。
 あと、わたしは「起点」という言葉を使っているけど、一般的に言う「起点」は「始点」の意味のようです。わたしの「起点」は「始点&終点」という意味で使ってます。道はやっぱり、「ここから」だもんね。



第2章  Route7

「新潟県、すっごく長かったね。たくさん道の駅あったし」
「予定が。少し遅れたな……」
 俺はそう呟いた。R7に突入し、ただひたすら北上するだけの俺に、まるで行く手を阻むかのごとく、道の駅は襲ってきた(襲っていない)。夕方、18時を回り陽も落ちかける頃、20時となり闇が辺りを覆っても、道の駅は俺を待ちかまえていた(待ちかまえていない)。ふらふら、ふらふら、せらちゃんは。あっちの駅、こっちの駅、吸い寄せられるかのように看板を探した(せらちゃんが探しているわけではない)。見つける。俺は取り憑かれている、デジカメを手にせらちゃんを降りる、アングルを考える、光の当て方を見る、そして。

 パシャッ
 パシャッ

 ここで断っておくが、デジカメなので、フラッシュこそたかれるものの「パシャッ」という音はしないことに注意していただきたい(もう文面めちゃくちゃ)。

 写真を数枚撮ってすぐ出発しようとする、満面の笑みを浮かべる俺を、そしてせらちゃんの姿を、一般の旅行客は不思議そうな顔で見守っていた……(見守っていない)。

 終わりそうだ\( ̄▽ ̄;

 地図を確認してみよう。新潟県を北上し、県境を抜けると東北地方に入る。山形県、秋田県、そして青森県。R7は秋田の一部で北上から東へ流れるが、基本的にはただひたすら北へ向かうことになる。
 山形に入り、すぐの道の駅温海(あつみ)、「夕陽のまちしゃりん」で俺はしばし車を停める。午後5時前、ちょうど陽がオレンジ色となり、これからあっという間に夜を迎えてしまう直前と考えたからだ。道の駅の名前も実に良いタイミングだ。俺はそれが当然のように右手首にデジカメを抱え、土産物の店を横目に海の方へと歩き出した
 金沢の海のそばに住む俺には、日本海は見慣れたもの。朝日の海も、昼間の散歩でも、夕方の眩しさも、夜の神社の祭りのときも、海が近くにあることはごく当たり前のことだと思っている。考えてみよう、福井県の道の駅「河野(こうの)」と比較するとそれほどでもないがここもそれなりの山道だ。先ほど通ってきたR8、富山新潟県境を実際に(自動車、電車は問わず)通ったことのある方ならわかるだろう、うねうねとした山道を通りながら眼下には日本海があるわけだ。
 海と山は対するものと考えることが多くなりがちだが、案外と混在する景色も多々あるし、山道で数十メートル崖の下が「ざっぱ〜ん」な海であることはそう珍しいことではない。俺はまだ地元北陸くらいしかそういった混在景色を知らないが、太平洋や瀬戸内海、オホーツク海などでも当然(たぶん)存在するだろう。そんなことを楽しみに旅行をするのもまた変わった観点ではないだろうか。


 さらに北上を続け、時刻は20時になろうという頃。
 朝からひたすら運転し続けた疲れが来たのだろうか、第一の睡魔が襲ってきた。これまでの長距離の旅行でわかったことは、眠気が来たときは素直に寝たほうがよい(というか当たり前なんだが)ということだ。特に、「眠いかも……あ、眠い」と思った瞬間からすぐ、ごく短時間、1時間ほどの一眠りは、その後のドライブに支障をきたすことなく、かつそれまでと変わらず景色を観賞しながら運転することができる。ちょうど俺を襲ってきた道の駅鳥海(ちょうかい)(襲ってないって)は、駐車場も広く一眠りするにはちょうどいい場所だ。
 俺は後ろ座席から毛布を引っ張り出すと、シートを倒し、深い眠りに就いた(深いかどうかはわからんけど。ほぼ1時間、起きたらずいぶん楽ちんだったのさ♪)
「寝てる間に襲われる?」
「俺がか?」
「うぐぅ(なんかちがう)」


 そう、そうだ、目が覚めてからフェリー乗り場に電話をかけた。いちおう、ゴールデンウィーク、客が多く乗れないということも考えられる。予約を入れておけばまず間違いはない。といっても前日だ(^^;


 秋田県に入った。
 俺は、秋田市に入ってから10分以上同じところを行ったり来たりしてしまった(悔しい)。それは何故か。R7を直進していると、R7は二手に分かれる。片方はR13との分岐点への町の中への道。もう片方は、町から離れた海沿いを走る道だ。俺は、海沿いの道を走ってしまった。こっちは、まだバイパスが出来ていないからなのか、途中でR7が終わってしまい、左右の県道から復帰しなければならなかったのだ。俺はそれを知らず、「まぁそのうち復帰するだろう…… やっぱ戻るか(ぉ」と県道を1km進み、またR7を数km戻った(汗)。
 どこにそんな看板があったのだろう…… うがー(T▽T)
 しょうがなく地図を確認、R7制覇に影響がないように近道となるほうではなく、出来るだけ大回りをする。このあたり俺はおかしいと思う(と一応言ってみるがほんとはそんなおかしくないっしょー、とか言い訳しつつどんどんむなしくなり、そろそろ悲しくなってきたのでやめておこう)。


 がーん!! コンビニで買ったバナナ牛乳。こぼした(T▽T)。
 道の駅、琴丘(ことおか)。地名に可愛らしさを感じるのは俺だけだろうか。
 まず、パックを開け、ストローを差す。一口飲む。うむ、バナナ牛乳だ。
 俺は、普段毎日車に乗った時に、走る前の走行距離を控えている。また、長距離ドライブの時には主な停車場所では走行距離を付けている。道の駅もそのひとつだ。俺は本を手に取り、距離を書き込むためにシャープペンを探す。確か助手席の上に置いたはずだ……ないぞ? 手の届くところには見当たらない。俺は運転席のドアを開け、外へ出る。助手席側からドアを開け、「あれ〜 シャーペンどこ行ったんやろ〜? ……あ、シートの下におっこちてた」
 とストローを差したままの500ml紙パック。運転席の、座布団の上にちょんと置いてあったそれ。が。
 助手席のドアを閉め、運転席のほうに回り込み、ドアを開けたとき。

 車内から、バナナの良い香りが(T▽T)

 慌ててジュースパックを外に投げ捨てる(;;)座布団はべちゃべちゃ、それも外へ放り出す。シートの座るところをちょっとだけ斜めにしておいたため、こぼれたそれは見事、くぼんだ部分にちゃぽちゃぽと(号泣)。
 俺は後ろ座席から、タオル、ティッシュ箱、ウェットティッシュを素早く取り出し、急遽シート洗いの作業に入った…… 本当に泣きながら作業していたのは内緒だ。
 シートの水分吸い出し処理が終わったら、座布団をトイレの洗面台で洗う。完全丸洗いだ。カバンに忍ばせておいた(表現おかしい)ハンドソープを大量(うそ)に使い、泡立てる。タオルも何度も洗う。しかし、バナナの香りはなかなか取れなかった。
 コンビニ弁当は冷めていた。1時間が過ぎていた(T▽T)


 そこからはまともに進む。いつものように道は続き、いつものように道の駅が現れ、いつものように写真を撮る。
 だが。
 それは、道の駅弘前(ひろさき)で起こっていた。だが、ここでは何も気が付かなかった。後で詳しく説明しよう。


 青森市。
『新潟から471km』
 そんな看板が見える。そう、R7の終点が近い。新潟市でもそうだったが、このあたりではせらちゃんの進み方もとろとろ、デジカメがふらふら揺れる。鼓動が速くなり、目が輝く。嬉しい、楽しい、早く見たい、いろんな期待が高鳴りが、俺を包み込んでいた。

 通り過ぎてしまった(爆)。コンビニのおねーさんにちょっと聞く、知らないらしい(T▽T)。

 再び。地図を見る、お、大きな公園がある、きっとこの入り口だろう……
「ビンゴっ♪(>▽<)/」
 あったあった! 黒い石碑、国道元標!!
(書いてる今、写真を確認しながらも笑みがこぼれるつくつく)

 俺はハザードランプを付けてせらちゃんを降りる。つったかたかと駆け寄る。まちがいない……!
 道路元標

(しばし眺める)

 感動。
 まさにこの一言に尽きた。
 日付も変わり、4月30日。時刻はそろそろ4時になろうという頃だ。まぁ疲れもあったかもしれない、余計なことを考える余裕もなかったのもしれない、体力的に……いや、それは嘘かな、体力はあったし、精神的にも、興奮はしていたが滅入るようなことはなかった。
 ただ素直に、感動していた。
 新潟でも、ここまでのものではなかっただろう。もう少し明るく、夜明けを待って公園の入り口の写真を撮りたかったが、北海道へ渡るフェリーの時間が7時10分、その1時間前には手続きをしておきたいと考え……。
 俺は、北へ向かった。


章末。
 R7を進んでいたときは、R8に比べて非常に有意義な時間を過ごしたね……いろんな意味で(;;)

 そう、結局丸洗いした座布団は後ろ座席のさらに後ろに乗せておいて、ずっと乾くまで放っておいた。んで座布団なしでしばらく運転してたんだけど、なんかお尻が痛いんよ(^^; <デリケートというか神経質というか…… んでしょーがないから助手席のほうの座布団しばらく使ってた。そう、座布団を使うのと使わないので、座高が変わるでしょ。座布団使うと、ちょっと足伸ばさないとクラッチペダルが遠いといふ…… 普段からそんなだからもう慣れちゃってて、出かける前日に姉が乗ったとき、「遠い」って文句ゆーてた(@▽@; シート前出して対応してちょ(^^;
 それにしても、R7ってR8に比べると道の駅の数が多い多い。まさか10km間隔で3つとかあるとは思わなかった。どこの道の駅が良かったかな…… また写真見ながら考えましょ♪ 独りで(汗)



第3章  フェリーに乗るぞっ!

 フェリーに乗るぞっ!(>▽<)/
 ……無理です(いきなりかい)。

「ねぇ、なんでこんなところで止まるの?」
「……」
「こんな中途半端なところ。下北半島に入ったばっかりじゃない」
 場所は、青森県、横浜。けして神奈川県横浜市ではない(間違えるやついーへん)。
「……がない」
「え? なに?」
 つくねは俺に問い直してきた。
「24時間やってるガソリンスタンドがないんじゃー!!(T▽T)(自爆)」
「うにょ〜(ΦwΦ)/~~~」
 そう、迂闊にも俺は、とんでもないことをしてしまった。青森市で最後の24時間営業のスタンドを見てから、朝5時に営業しているそれが見つかることはなかったのだ。この時すでに、「ガソリン量残りわずか」を示す赤ランプが点灯してから50km以上走っていた。ようやく横浜のちょっとした住宅街が見つかったものの、これより先に進み、スタンドがあることに保証などない。その前にガス欠になることも十分に考えられる。
 あとで計算した燃費によればもう50kmくらいは走れるはずなのだが、その時には、予想燃費は(当然ながら)小さく換算されていた。スピードを落とし、走り続ければ次の町並みで給油することもできた。焦りの見える俺には、そんな余裕の意識はなかった。
「……GS開く7時まで寝るか」
「おやすみー」
「? お前はどうするんだ?」
「先に大間に行ってるね」
 大間は、下北半島の最北端、いや、本州の最北端の地だ。俺はそこからフェリーに乗り込み、函館に渡ろうと考えていた。
「どうやって?」
「そんなの、飛んで行くに決まってるじゃないっ♪」
「さよですか。いってらっさい」
「じゃああとでね〜〜〜」
 つくねは北へ飛び去っていった。
「……わけわからん」


 30分ごとに目が覚める(汗)特に疲れや眠気がたまっているわけでなかったらしい。
 考えてみると、前日20時に1時間眠っただけで、それから5時まではノンストップだ。しかも明るい昼間ではなく、真夜中。俺はやっぱり夜型なんだろうか?
 夜と言えば、思いはひとつしかない。
「まともに写真が撮れない(;;)」
 この旅行の中で様々な写真を撮った。人がいれば景色があればオブジェがある。オブジェは大好きだ(爆)特にヘンテコなものが大好きだ。新潟県能生で見つけた丸いの4つ+子供は、俺の好奇心を奮い立たせた。いや、ヘンテコなものが好きとは言ったが、ピカソの絵が好きだとは言ってない(誰も聞いていない)。
 それはさておき、やはり暗いのは辛い。大きな照明がある場所でも、綺麗に撮ろうと思うと(俺のレベルがどれくらいかはともかく)朝方〜夕方でないときつい。いや、方法はある、せらちゃんのライトをアップにして、看板やオブジェなどの周囲を照らすのだ。これでずいぶんと助かった写真もある。だが、辛い。からくはない、つらい(謎)


 ……おや? 少し眠り過ぎてしまったようだ。時計の針は、7時半を迎えようとしている。フェリーの予約は7時10分。とてもじゃないが、無理だ。
「おはよう♪」
「ん……ぉうわっ!」
「どうしたの?」
 つくねはひょこっと首をかしげる。
「なんでお前がいるんだ!?」
「ひっどーい、わたしがせっかく戻ってきてあげたのに」
「せっかく、は余計だ……じゃなくて、どうやってこの中に入ってきた? 鍵はかかってるぞ」
 俺はドアのロックを目で再確認した。かかっている。
 その問いにつくねは、
「(ニヤソ)」
 と、怪しい笑みを浮かべた。やばい、これ以上聞くのは得策ではない(爆)

 そうして俺は、せらちゃんをすぐ近くのガソリンスタンドに移動し、給油した……この旅行中、すでに3敗。


「早く抜けようよぉ……」
 大間への道すがら、めずらしくつくねが弱音を吐いた。両手を両膝の上で握り、うつむいたまま情けない顔をしている。
 まだ8時。R279を進み、ようやくむつ市に到着した頃だ。
「無理だって。ここからまだ大間まで、1時間はかかるぞ」
 かかるのなら、もともとどうやって7時10分のフェリーに乗るつもりだったのだろう?(ぉ
「ここ、怖いよ……」
「へっ?」
 怖い?
 ……なるほどそうか。有名な場所じゃないか。

 恐山。

 すぐ左手には恐山へ入る道がある。恐山と言えば、イタコや自殺の名所(なんか変な書き方だ)だ。つくねは、そんなところには敏感なのだろうか?
 俺は何も答えず、先を急いだ(急いだんかい\( ̄▽ ̄;


「わぁ! 右手に海が見えるよ〜♪」
 つくねがはしゃいだ。そうだ、いままで左手に日本海を望んでいたが、右手に海を、それも日本海以外を望むのはこの旅行中初めてだ。
 気持ちがいい。俺は車の窓を全開にする。
「あぁれぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜」
 つくねが外に吹き飛ばされそうになり、慌てて窓枠をつかんでいる。知ったこっちゃない(意味不明)。
 ここまで来れば、函館などもう目と鼻の先だ。初めてのフェリー、高校以来の北海道。楽しみだ。
 そうだ、まだ触れていなかった、俺は高校の修学旅行で北海道を訪れたことがある。17歳の初夏のことだ。当時、俺は旅行などちっとも興味はなかった。
「意外だね」
「そうか?」
 遠出をしても、遠足があっても、思い出せる楽しみは少しもない。いや、正しく言うと、「楽しみ方を知らなかった」ということだろう。ただ無駄に時間を過ごしていたのかもしれないと思うと情けなくなる。
 俺は、無知だ。自分がその時「楽しい」と思えること以外にはまったく興味を示さず、知ろうともしない。滅多に興味を示さない上に、熱しやすく覚めやすい(漢字は「冷」じゃなくて「覚」かなぁ……)ので知識も中途半端になることが多い。困ったものだ(自分で言うな)。
 これが理由か、一人で動くことが多い。団体行動は嫌いなタイプだ。一人旅なんか、そういう意味ではもってこいなのかもしれない。誰かを気にせず、自由に動くことができる。俺の好きな歌手、奥井亜紀さんのある曲に、こんな歌詞がある。

『いい加減と自由って、よく似てるけれど、気持ちいい風がいつもそばに』

 俺はこの曲が気に入っている。大きな見方をすれば、まさに一人で行動し、気ままに過ごせる、といういろいろな取り方のできる歌ではある。しかし、こんな俺に見事に当てはまる。
「優しさって、心にゆとりがないと、できないよね……」
 つくねがふと呟く。
「なにを突然」
「ん、なんでもない」

 大間は、もうすぐそこだ。


『東日本フェリー』
「来たぜ来たぜ来たぜ〜〜〜!」
 俺はガッツポーズを見せた。ついに本州最北端の町、大間に着いたのだ。
 4月30日。時刻は9時半を回ったところ。穏やかな、気持ちのいい青空。快晴ながらも海のすぐそばということで涼しい潮風がとにかく心地よい。
「ねぇねぇ、次のフェリーって、何時出発なの?」
「おぅ、13時50分」
 まだ4時間ある\( ̄▽ ̄;
 まずは、乗船の受け付けだ。
「なぬ? 11時過ぎないと受付始まらない?」
 仕方がない、せらちゃんの長さとか、乗る人数とか、そういった必要事項を用紙に明記しておこう。
 せらちゃんと一緒に函館へ。4m以内、9900円なり。最初の予想は往復3万円だったので、思ったよりは安かった。
「なぁ、お前も2等の客室でいいか?」
「えっ!?」
 つくねは驚いた表情を見せた。いや、俺は驚くようなことは言ってないと思うが……。
「わ、わたしは、ほら、空を飛んでいけるから!」
 どうやら、もともとフェリーに乗るつもりはなかったらしい。
「別にええやん、乗ってけば」
「ううん、いいって、お金かかるでしょ。旅行に使わなきゃもったいないよ」
「……うーん。まぁ、任せる。雨降ったりしたら、さっさとフェリーの中に入ってこいよ」
「あらら…… ありがとう」

 ここで断っておくが(ぉ)つくねは実際には存在しない(爆)なのでお金は必要ない <なんか俺、変なこと言ってないか?\( ̄▽ ̄;


 そうだ。今日までの写真を整理しておこうと、俺はノートパソコン「らびえす♪」を開いた。デジカメにはメモリカードがささっている。アダプタを使えばそのままノートパソコンにドライブとして取り込み、ファイルのコピーや移動、削除ができるのだ。写真はすべて640×480のJPEGファイルなので、閲覧も簡単だ。

 まず、30日付けのファイル名を、04300001 からの連番に直してしまおう。29日付けが104枚と、異常な枚数になっているのはきっと気のせいだろう。30日付けが「04300105.jpg」から始まっている、いまのところ3枚。名前を「0001」から「0003」まで変更する。
 そして、1枚目から順番に確認だ。

 …… やっぱ、能生はええなぁ☆

 黒崎。うん、チューリップ

 おぅ、新潟の国道元標

 あぁ、あんあんむら\( ̄▽ ̄; まほろば温泉にお客を全部取られてるんだろうなぁ。20分で着いちゃうし。

 鳥海で一眠り。このあとは全部夜だ…… 好きだったオブジェも暗い……うにゅー(;;)

 ことおかっ!(T▽T)

 浪岡(なみおか)、あっぷるひるー……かぁいいのに。残念。

 そして……

「っ!?」
「……どうしたの?」
 それまで独り言を続けていた俺が急に口をつぐんだので、つくねがふとこちらを見た。
「どうしたの、変な顔し、て……」
 つくねも、言葉が途中で止まった。顔が青ざめていくのがよくわかる。

 それは、青森県は弘前市。道の駅ひろさきの看板の写真だ。
 俺は、何の変哲もない、りんごの絵が描かれた看板を撮ったはずだ、いや、まちがいない、そうなんだ! だが、画像には、もっともっと、変な物が写っていた……。

 自分で撮ってみなきゃ、とても信じられません。
「……し、心霊写真?」
 つくねが恐る恐る尋ねてくる。俺はその言葉で我に返った。

 Shift+Deleteキー押下。

 もう、これしか手だてがありません(;;)
 こんなとき、デジカメって便利ね\( ̄▽ ̄;

 そう、これには驚いた。俺は、縦長の写真を撮った。確かに、上半分にはオレンジ色(?たぶん……)の看板が写っていた。だが、下半分は暗くなかった、黒くなかった、白かった(T▽T)。なんの変哲もないはずの夜の道の駅。白いもやが、うにょうにょと…… そのもやの中に、まるでムンクの叫びのような、人の顔のようなものが、くっきりと、1,2,3,……たくさん、あった……。
 背筋が凍るよう、っていうのは、きっとこんな感じなんじゃないかな、そう言うだろう、きっとそう言います、はい(激汗)
 俺は4敗目を喫した(滅)。
「はよ忘れよう……」
「そうね……」


「ねぇねぇ、あれってなんだろ?」
「んー…… おぉ、ありゃテレビ番組かなんかの撮影だな、いわゆる『ロケ』ってやつだ」
 俺はそこで、気が付いた。フェリー乗り場の建物の入り口に、ポスターや旗、NHKの機材が置いてある。よく見ると、付くには大型バスやキャンピングカーも一緒になっていた。
 平成12年5月現在、NHKの朝の連続テレビ小説は、「私の青空」だ。ちょうど、大間から青森→函館シーンのロケ中だったのだ。居合わせた観光客が野次馬の枠を作っている。一部の連中は、フェリーに乗り込む他の客、という脇役に抜擢されたようだ。
 俺は、そんな光景を横目に、看板やら変わったものの写真を撮るのに熱中していた(爆)。フェリー「ばあゆ」や、フェリー乗り場の可動橋。ロケの野次馬(ぉぃ)にテレビで見たことのあるおばはん見たことのない監督
「結局近寄ってるんじゃない」
「気にするな」

 お昼ご飯を済ませ、13時過ぎ。アナウンスが聞こえてきた。そろそろ車の乗船時間のようだ。俺はせらちゃんに乗り込む。他の車も列をなし、フェリー乗船の時間を待った。


 いろんな思いが脳裏をよぎる。よぎりの私。なにを言っている(滅)。
 もう少しで、本州を離れる。北海道の地に渡る。
「北へ」
 そうだ、ここが終わりじゃない、本当の旅行は、これからなんだぞ。俺は自分にそう言い聞かせ……
「あーーーーーーーーーっ!!!」
「な、なんなのなんなの!?」
 つくねが目をまん丸にしてこちらを見ていた。俺は頭を抱えた。
「ここって、本州の最北端じゃないーーーーーっ!!」
 つくねの頭ががくっと崩れる。
 しまった、弁天島を眺めるのを忘れていた(自爆)。弁天島を眺める「大間崎」こそが、本州最北端だったのだ。
「もう遅いね♪」
 つくねはニヤソの状態だ、ちくしょう、なんだか嬉しそうだ。

 俺は……。

 思いっきり後悔を背負って、フェリーに乗り込んだのである……。やってもた(T▽T)俺は5敗目を喫した。


章末。
 まず一言。
 青森から大間って、遠いね(汗)この距離と時間を考えると、帰りは函館→青森のほうがいいかもしれない。函館→大間だと、R4に復帰するまで、かなり時間と体力のロスになりそうだ。

 それにしても、道の駅ひろさき、には参ったね(汗)しかも削除しちゃったでしょ、もう再確認のしようがないんだな。めちゃくちゃ怖かったー(T▽T)……しくしく(;;)

 あ、そうそう。たまぁに「?敗」って書いてるけど、これは、自分に負けた回数ね(^^; たぶん、自分に勝った、っていう意識はなかったから(笑)えんえんと負け続けてるわけで(あちゃー)。今回の旅行で、いったい何十敗してるやら…… 一番最後に数えてみよっと(@▽@;

 もう一つ。
 心霊写真の続報、あとでお伝えします(^^;



第4章  Route5

「ついに来ました、北海道!(>▽<)/」
 俺は、せらちゃんは、北海道の地に立った。これもまた、感動である。時刻は15時半を過ぎた頃。お昼ご飯をまともに食べていれば、ちょうどお腹の空く頃である。しかし俺はフェリーの中で、コンビニで買ったぷりん○るすを食べていたので、特にお腹は空いてなかった(謎)。
「……遅かったわね」
「うわっ!?」
 受け付けで帰りの乗船の予約をして、もらったチケットを財布に入れながら建物を出てくると、そこにはうだ〜〜〜っとした顔で待っているつくねの姿があった。
「そういやお前がいたんだった。すっかり忘れてた(爆)」
「わ、忘れてた!?」
 そう、俺はフェリーの中で一眠りした時にはもう、つくねのことなどすっかり忘れていたのだ!!(@▽@;
「こっちは大変だったのよ! 途中でカモメとカラスに襲われそうになるし、ぼーっとしてたら船に頭をぶつけるし、あんまり遅いんで船の上で寝てたら作業服着たおじさんに、こんなところで寝ちゃだめだって怒られるし……」
 俺は途中から聞いていなかった。地図を確認する。
 R5は、函館市(はこだて)から札幌市(さっぽろ)までの約280kmを結ぶ。途中、森(もり)、長万部(おしゃまんべ)、ニセコ、小樽(おたる)を経由する。札幌までは、高速道路を使わなければこの西側のルートを使って行く。途中長万部から洞爺湖(とうやこ)方面に進路を変え、R230で北上するという手もあるが、いまの洞爺湖と言えば、有珠山(うすざん)の噴火から全面通行禁止になっている。残念だがこの道の選択肢は外さなければならない。しかも東へ向かう高速道路も、豊浦−虻田洞爺湖(とようら−あぶたとうやこ)区間は通行禁止。非常に残念だ。
 先ほど触れたが、俺は高校時代に北海道に訪れたことがある。今回の目的のひとつに、その訪れた場所を再び訪れよう、というものがあるのだ。故に、洞爺湖温泉、昭和新山に行けないということはその予定のいくつかが潰れることになる。悔しいが、実際に避難生活を続けている地元の人のことを考えると、わがままを言うわけにはいかない。

 俺は、ぶつぶつ文句を言っているつくねをなだめると、南へ向かった。
「なんで南なの? 札幌は北でしょ?」
「もちろん。んでも5号線はここから始まってるわけじゃないっしょ」
「あ、そういうことね」
 俺は説明を続ける。
 R5は函館市と札幌市を結ぶ。いまは確かに函館市だ。だが、道路元標のある函館駅の前からは5kmくらい北へ進んだところなのだ。ここから北へ向かったのでは、R5制覇にはならない。
 さすがに函館市。人口が多いので走っている車の台数も多い。時間帯も重なったのかそれなりに渋滞の色を見せた。R5もこのあたりは町の騒がしさを持っていた。


 南へ向かい、20分くらい経った。時刻はちょうど16時。
 函館駅に着いた。いったい道路元標はどこにあるのだろう?
 探すという楽しみも確かにあるのだが、今日中に札幌に着きたいという思いもあったために近くの派出所に入り、聞いてみる。
「あれは君の車? そこは駐車禁止なんだけど」
 やかましい(TT)そんなこと聞くために入ったんちゃう(ちょっと怒り)
 まぁそれはともかく、道路元標は駅前、ここで良いようだ。すぐそこにそのようなオブジェ(どーろげんぴょーも、オブジェなんかなぁ(^^;)があるらしい。俺はデジカメを手に派出所を出て、歩くこと、30秒。
あったあったっ♪(>▽<)/」
 黒くない道路元標(^^; (緑色ですが、間違いありません)……でも、なんでここだけ手書きっぽい石碑なんだろう? なぞー。

 デジカメを手に持ち、道路元標の前でそれを眺めるオヤジの姿(爆)俺はまだオヤジちゃう(;;)どうもこの眼鏡のフレームが、オヤジくさい(^^; まぁ、うちの親の使ってたフレームをそのまま持ってきたから、オヤジ臭くてもしょうがない(汗)そのうちお金に余裕ができたら新しい眼鏡買うさ。コンタクトレンズはどうも不安…… すぐなくすだろうから(^^;


 しばし、感動に浸る。証拠写真を収めていく。さぁ!ここからR5が始まるんやで〜。札幌まで、たった280km!
「さー、がんばるぞー」
「おー♪」


 去年だっただろうか一昨年だっただろうか、今となってはいつのことだったのかもう覚えていないのだが……ある友達から勧められて始めたゲームがある。今回はそのゲームの内容について触れてみよう(突然だぁね(^^;)

「ねぇ(突然)」
「なんだ?」
「いままで、テキストファイルに打ち込んでるじゃない?」
「なんちゅー作者的な話じゃ(^^;」
「もう予定の30kB超えたよ」
「気にするな」
「だってまだ、旅行の3分の1にも来てないじゃない」
「……どーしよーさねー。まぁ気にしなさんな」
「また『お前の文章は長いんじゃ』って言われちゃうよ」
「言われるだけまだマシ。長いから読まれないことのほうが多い」
「なんだ、わかってんじゃん」
「やかましい」
 俺は車の窓を全開にする。
「あぁれぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜」
 つくねが外に吹き飛ばされそうになり、慌てて窓枠をつかんでいる。

 さて、話を戻そう。
 最近はちらほらと、ゲームをするようになってきている。といっても、男のサガというか、ジェミニのサガというか、なんというか…… 種類は18禁ばっかりだ(おおっぴらに言わなきゃいいのに\( ̄▽ ̄;)それでも俺が自宅で触れるゲーム機というと、もうパソコンしかない。ファミコンもスーファミもプレステも、全部弟妹の手元にあって、たまに遊ぼうと思っても面倒で諦める。そうなると、残る本体はパソコンしかない。俺は、自慢じゃないが、ゲームは選ぶほうだ(意味不明)。余程のことがない限り、ゲームソフトは購入しない。
 そんな中、ここ数年でゆっくり遊んだゲームは、次のものだ。
・コンパイル ぷよぷよ通
・Elf この世の果てで恋を唄う少女 YU−NO
・Leaf ToHeart
・Key Kanon
・アイル 真・瑠璃色の雪

 これ以外は、友達から勧められてもやっていない。やらずに、音楽とCGを鑑賞し、終わる(爆)。オープニングから自分がのめり込めるものでないと、どうも始まって10分でやめてしまう癖(?)があるようだ。たぶん、俺はわがままなやっちゃなんだろう(全員肯定)。
 普通のゲームはだめだぁ……。「これはっ!?」っていうシナリオがあると、とことんはまる。そのシナリオだけ。基本的に、18禁は好きじゃない。あんなもん、若いあんちゃんのためのオマケでいい(変な説明になりそう(^^;)その点で、YU−NOははまった。もし、なんだったか……セガサターンを持っていて、手に入るようであれば、SS版YU−NO(確か18禁扱いではなかったはず)を試してみていただきたい。よく考えると「矛盾してないか?」と言いたくなる箇所も、あるにはあるが、感動するストーリーだと思っている。
 また、最近大阪で買った(謎)真・瑠璃色の雪は、初めて自分で買ったパソコンゲームである、PC-98 MS-DOS版「瑠璃色の雪」のWindows版リメイクである。登場人物はほとんど変わっていない、設定もほとんど変わっていない。DOS版のエンディングには無理があり、納得しなかった終わり方だった。今年の春、Windowsに移植が決まった時に、「これは初回限定、絶対買うぜ〜」と言っていたにも関わらず予約を忘れており、発売日翌日にお店に行くともう売り切れで悔しかった覚えがある(^^;)。「もうええわ……」とあきらめていたのだが、なぜか初回限定版中古が見つかったので迷わず買う(爆)。
 歌3曲入った、シングルCD入っとるんよ〜♪ <シナリオはどうなった?(@▽@;
 どうも脱線してしまう、話を戻そう。
 なぜこんなところで、こんな話を持ち出したかというと、残りのゲームのうちのひとつ、ToHeartに関係がある。
 このゲームの中の登場人物に、北海道から来たというキャラクターがいるのだ。函館出身、という設定なので、「こいつは見てこにゃあかん!」と、わけのわからない理由から、目的をひとつ作ったのである。

 その目的、ひとつ、なんというか……達成
「ひめかわ〜〜〜♪」
「って、ただの地名じゃん」
 突っ込みを入れたのは、珍しくつくねのほうだ。

 以上。(爆)


 簡単に説明を……なにゅ?もういい?(^^; (まぁそう言わんと(^^;;;)
 函館駅から北に進むこと、1時間。道の駅、がある。その付近に「姫川」という地名があるのだ。
 あらためて考えてみると、全然関係ないね(爆)

 以上\( ̄▽ ̄;


 看板、「サラブレッド育成牧場」を過ぎた頃。つくねが話し掛けてきた。
「そういえば、長万部って、高校の時来たことあるよね?」
「なんでお前が俺の過去を知っている……」
 函館から洞爺に向かう際、立ち寄ったのが長万部のある物産館である。ここの思い出と言えば、これしかない。
 どこぞのおっさんのダミ声だ。
「1000円のところ、学割で900円や!」
 同じ高校の同級生連中に聞いても、必ず同じ答えが返ってくるであろう(@▽@; インパク値は最高だ。あのおっさんも、ここまで俺たちに思われていると知ると、さぞ嬉しいだろう、いや嬉しいに決まっている、嬉しくなければ嘘だ(なんじゃそりゃ\( ̄▽ ̄;)

 まぁいい、忘れよう(無理)


「わぁ! これかっこいいっ♪」
 つくねが叫んだ。時刻は19時半。道の駅、ニセコだ。
「確かに、これはすごいな」
 俺は見入ってしまった。もしかすると、別段、なんてことのない地図かもしれない。だが、これはすごい。地図自体に細工がしてあるのかもしれないが、山の地図が、見事な立体を表現していた。昼間見ると、これはどんなふうに見えるのだろう?
 そうだ、ニセコ。カタカナの地名だ。俺がカタカナの地名を見てなぜ反応したかというと、最近ではお馴染みの地名があるのだ。滋賀県。
 マキノ。
 R161を走っていれば、誰でも目にすることができる。滋賀県の木之本IC近く、疋田からR8を離れてR161に入ったところだ。どうも、カタカナの地名というと、こっちが先に思い出される……。
「だからなに?」
 つくねが問う。当然だ、だからなんなんだろう?\( ̄▽ ̄; <自分でもよくわからん説明だったらしい(なぞ)


 黒松内(くろまつない)ニセコ余市(よいち)、小樽。いくつかの道の駅を経て、いくつかのトンネルを抜ける。そろそろ札幌だ……。
 ちなみに、メッツガラナ(一部受け)350ml缶は、自動販売機には「120」と書いてあったが、実際は150円取られた。150円入れて、お釣りは帰ってこなかった。無念。
 そうだ、道道。北海道の道、なので道道。1028号線の看板を見た。真面目に「すごい」と思った……確か京都には府道700号線などがあった覚えがある。それを軽く超えた数値だ。しかし、感動の場所が他の人とかなり異なるのが、心の中で「よっしゃぁっ!」と呟いた、というネタを用いなければなるまい(意味不明)。


「あれ? もしかして、R5ってここで終わりなのかな?」
 時計のあるテレビ塔を右手につくねが尋ねる。ここに、次に俺が行こうとしている旭川(あさひかわ)への道、R12への矢印があるのだ。
「いや、まだそっちには行かない。まだ、道路元標見つかってないやん」
 俺はR12を示す矢印とは逆に曲がった。ここを進めば、北海道庁がある。
 俺も道すがら、ちょっと立ち寄ったガソリンスタンドで聞いた話である。それまでは札幌に行ったとしても情報が少なく、すぐには道路元標を探し出せないのでは、と思っていた。札幌市内、R5は東1丁目西1丁目の場所で、直角に折れ曲がる。テレビ塔があるのは北1条南1条で、直角に折れ曲がったところは北……いくつくらいかな……33条くらいなんだろうか。
 札幌や旭川は、京都と同じように、街を碁盤上に区切り、中央から何条、何丁目と、数えることができるようだ。京都であれば、例えば堀川五条、烏丸四条、河原町七条、などと言った地名がある。俺の持っている地図には、五条堀川、四条なんとか、と書いてある。なにが正しいかはあまり気にしていない。一条がもっとも北で、数字が大きくなるほど南へ向かう。十条あたりを通った覚えはある。ここまで京都の話だ。
 札幌はどうだろう。テレビ塔のある付近が(正しい中央点は知らない(^^;)東西南北の中央で、そこから、東西には何丁目、南北に何条、となるようだ。
 ちなみに、旭川はもう少し異なり、どちらかというと京都により近い。後でもう少し触れてみよう。

 さて、時刻は22時半を回っている。フェリーを降りてからまだ休憩という休憩を取っていない。早めに道路元標を探して、次の道の駅で一眠りすることにしよう。


「これが道庁なのかー」
 門の柱には、『北海道庁』と書かれている。
「でも、これって本当の道庁じゃないよ」
 つくねが言う。その通りだ。ここの赤レンガの建物は、旧道庁なのである。一般の観光客が自由に入り、見学することができるところなのだ。
 道路元標は、ここにありけり!!

 暗い\( ̄▽ ̄;

 道庁の入り口にせらちゃんを停める。道路元標をライトアップする。それでも暗い(汗)俺は電池のなくなりそうなデジカメを持ち、アングルを考える。
 ダメだ、どうしても綺麗に撮れない……何枚か撮ってはみたが、諦めた。諦めざるを得なかった。こうなったら、明後日、札幌に戻ってきたときに改めて訪れよう。その時は、こんな夜中でなく昼間で、赤レンガの建物にも入れるだろう。

「そうは言っても、R5の制覇が嬉しくてたまらないつくちゃんだったんだよ〜」
「は、あははは(^^;」


章末。
 R5は、一部上り下りの激しい山道があるが、それ以外は実に単調だ。「面白さ」という面から見ると物足りなさも感じる。広大な土地とその開発の流れを考えると、確かにそれは否めない。ってゆーか、そろそろ考え方すらやばくなってきたよーなよーな(汗)

 R5札幌側起点は、R12や他の国道もここから始まる。ということは、R12の制覇もここからスタート、ってわけだ。今回の旅行、1回きりの道のりなのに、かなり制覇できそうだ。

 他には、えーと……なにがあったかな……もう覚えてないかも(^^;



第5章  目指せ稚内

 ここからは、一桁国道ではないので特別区切ることはやめよう。
 札幌を出発すると、R12でそのまま旭川に出る。R40にスイッチし、とことん北上を続けるとそのまま稚内(わっかない)に到着する、ってわけだ。

「……だいじょうぶ?」
「やばい(汗)」
 R12を走り始めてわずか10分。今回の睡魔はひどい。次の道の駅を探すだけの気力もなかった。見つけたコンビニの狭い駐車場の一番奥にせらちゃんを停めて、さっさと毛布とタオルケットをかぶり……おやすみなさい(〜〜)

「……わたしはどうしよう?
 どうしようかな……。
 踊ってみるか。
(踊ってみる)
 ……つまんない。
 早く起きないかなぁ〜……(つんつん)。
 起きない。
 つまんない。
 そうだ、ここで、寝てるつくちゃんの秘密をばらしていこう」
「おい」
「はっ!? 起きてたの!?」
「やかましいんじゃ! 頼むから寝かせてくれ……」
「じゃあ、子守歌、唄ってあげる……」
 ぐぅ……。
「もう寝てるし(;;)。
 わたしは……」

 よしっ!ここらへんで伏線はっとけ!(>▽<)/ ほーら、小説みたくなってきたぞ〜(自爆)
 でも、あんまりしっかりし過ぎると後でつらくなるって噂もある……それなりーに、それなりーに(^^;


 5月1日、朝。5時。
 目が覚める。少し曇っているくらいだ、実に気持ちがいい。俺は車のドアを開ける。エンジンをかけ、最弱のエアコンをつける。締め切ったままどんよりとした空気があっという間に入れ替えられ、爽やかさを取り戻す。
「あ、おはよう♪」
「うわっ!」
 俺は驚いた。開けたドアの向こうに、伸びをしているつくねの姿があった。
 今日のつくねは昨日までとは違う服装だった。白にレースがついたワンピース。前にボタンがたくさんついているタイプだ。時々「こういうのって不便じゃないか?」とも思うが「毎回全部外して着替えるわけないじゃん」という回答が脳裏をかすめる。
 と、そこで俺はあることを思いだした。
「おい、もう行くぞ」
「え?え? ちょっと待ってちょっと待って」
「うわっ」
 げしっ。
 つくねがドアの開いている運転席側から乗り込もうとしてきた。正しく言うと飛んで入ってきた。こいつはこいつでいちおう俺の動きの計算はしていたのだろうが、俺がしゃがもうと頭を動かしたもんだから、俺の頬につくねの膝が入った……ぐぁ(T▽T)。
 俺は納得のいかない表情で、せらちゃんを走らせた。

 その後10分。
 道の駅三笠(みかさ)。北海道の道の駅で通番1を得ている。
 俺はトイレに近いスペースに車を停めると、着替えとハンドソープを持ってトイレに駆け込んだ。
 ふと思い出したのは、俺がまだ、旅行に出てからTシャツ以外着替えていなかったこと。知り合いに会わないからという理由では済ませたくない、そんなことも考えた……余談だが、本当に女性を同伴するのなら、毎日ちゃんと着替える(爆)なにを俺はあたふた慌てているんだ?
 10分なら、コンビニの駐車場使わずに、ここまで来ればよかったな……少し残念だ。

 顔を洗い、口の中をすすぐ。さっぱり気分で外へ出ると、またも着替えたつくねがいた。
「えへへー、民族衣装だよ〜」
 俺はため息をついていた。どこから持ってきたのか、昔の写真や美術館にあるような上下1セットを着こなしていた。
「どこから盗んできたんだ?」
「うぐぅ、盗んでないんだよ……そんなこと言う人(以下検閲削除)」
 またカノンネタになりそうなのでここでやめておく。知らない人にはまったく通じない。俺もどうもヤバめだ。

 話を戻そう。
 ここ三笠は、札幌から北へR12を進むと始めに「やってくる」(だから違うって)道の駅だ。俺が三笠という単語を見ると、どうしても百人一首が頭に出てくる。あと、あいつ。あいつと言っても知り合いなわけではないが、もう6年前の話だ、過去に某雑誌でバカマンガを描いていたヤツがいる。名前を……フルネームで書こうと思ったが、紹介するのも悔しいのでやめる。百人一首、7つめから作った名前を使っている。当時マンガ雑誌を買って読んでいた俺に変な影響を与えたのもやつだ。実に悔しい。
 もうひとりやつと組んで(いたかどうかは不明)読者に影響を与えたやつもいる。ほんとうに悔しい。情けない、腹立たしい。なぜこの場を借りてやつらのマンガを誉めてやらねばならぬのだ(爆)あー。


 さて……今日の予定だが、これから夕方にならないうちに稚内へたどり着くことが目標である。ここを起点とすると、旭川市のR12,39,40原点付近までは80〜90km、R40が240kmと、合わせても所詮330km程度だ、時速50kmでも6時間半。いま7時だから……昼食時間含めても15時には着いてしもやん!(>▽<)/
 17時予定で考えれば、2時間どこかで一眠りしても問題なしってことか。よしよし、いい感じだ。
 っと、話してても進まない。行くぜ〜♪


「これ、すごいぜっ!」
「なになに?」つくねがやってくる。
 ここは道の駅奈井江(ないえ)。三笠から20kmほど北上したところだ。余談だが、奈井江のそばに、茶志内(ちゃしない)という地名もある。コンボで名前が気に入ったのは、俺だけだろうか?
 俺が驚いたのは、奈井江の駐車場で見つけた看板だ。表(駐車場側)には「国道12号 トリップガイド」という地図がある。すごいのはこのだ。
日本一長い直線道路
 俺は迷うことなく惹かれた(笑)。さすが北海道、スケールがでかい。
 29.2km。ひたすら直線だなんて(笑)。金沢の、うちの近くの街道だって結構長い直線だが、それでも6kmだぞ。毎日通勤で使っているが、帰り道は嫌になるんだぞ(ぉ これで29kmも直線か…… 美唄(びばい)、奈井江、砂川(すながわ)、滝川(たきかわ)。市を3つもまたいでいるとは驚きだ。
「フルマラソンの7割なんだね」
 俺を見ていたつくねがくすくすと笑って言う。どうやら俺は目を輝かせて看板を見ていたようだ。俺は我に返った。
 だが、確かにそうだ。42.195kmの距離と比較すればわかりやすい。ランナーが、体力と精神力をもってして挑戦する距離の7割が直線……体力より、精神力が先になくなりそうだ。
 なんのために作ったのかは写真を参照していただきたい。
「へーーー、熊やヤブ蚊に襲われるのも日常茶飯事なのか……やっぱすごいわ……」
 俺はしみじみ感じた。ここなら熊を食糧として……また変な話になりそうなのでやめておこう。

 そういえば、過去にテレビで見たことがあるが、なんでも北海道の大学のお祭りで、夜に学生がどこぞの道を一斉に走る、といったイベントを見たことがある。しかも全裸(ここに反応)。参加していたのは男ばかりではなかった。羨ましいような、嬉しくないような気がする。


「来たぜ来ました、旭川っ!」
 俺はデジカメ片手に車を降りる。
 R12をとことん北上すると、旭川駅付近にやってくる。バイパスを使うと駅前(市街地)を通らずにR39,40へとスイッチすることができるが、それでは制覇にならない。俺は交差点を見る、間違いない! 「R40起点」の看板だ。ここからR40オンリーで北上すると、問答無用で稚内まで行ける。
 ちなみに、R12はR39と切り替わる地点で終了だ。確かに、R40起点交差点を少し進むと「R39起点」看板が見つかった。ということは、この道の対向車線に、「R12起点」看板があるはずだ。

 んだが。
 俺は迷っていた(汗)理由はあとでわかるので省略する。R39を東に向かっていた。網走方面へ。R12などずっと手前で終わっているのにも関わらず。
 たまたま通りかかった白黒ツートンカーに乗っていたあんちゃんに聞いても、近くのガソリンスタンドのおっちゃんに聞いてもよくわからず、看板下に書いてある「旭川道路事務所」電話番号に問い合わせた。すると、やはり先ほどの「R39起点」看板の位置でよかったらしい。
 そうだ、旭川。ここは先ほど触れたように、綺麗な長方形区切りの町となっている。旭川駅のすぐ北に、このR12,39,40の分岐点がある。それよりもう少しだけ北を中心に旭川の町を見てみると、見事なまでにたくさんのまっすぐな線が引かれているのだ。何条通りいくつ、東何条いくつ、何条西いくつ、なんとか何条いくつ、といったふうにそれぞれの地点は表記される。細かい話をするとキリがなく、また俺も地図を見てそう書いてあったのをここで引用しているだけだ、あまり詳しくは説明できない。ただ、札幌の表記方法よりかは、京都の表記方法に似ていると思ったということだ。

 俺は戻る。話も戻る。すでに旭川市内に入って30分以上が過ぎようとしていた。
「やっぱり、これなんだ、これだったんだ……」
「だまされてるぅ〜♪」
 俺はため息をつく。つくねはやっぱり嬉しそうだ。ちなみに、服装はワンピースに戻っている、戻っていない、今度は黄色だった。

R39起点
 なんでやねん(T▽T)
 なんで、R12の起点に、「39」って書いてあるねん、札幌方面に向かうのに、なんで「39」起点やねん……うがー!(T▽T)

 そう、看板がおかしかった(汗)この看板、さっき確かに確認していたはずなのに……だまされた!
 気を取り直して、もう一度。

 パシャッ

 看板をデジカメに収める。ふぅ、一苦労だ。なんとかしてほしいところだ。
「待てよ? もしかすると、全国に存在する国道マニアの連中は、同じことを思っているのだろうか?」
「筑音さんは含まれないの?(にやにや)」
「やかましい」
 俺は苦笑いしながらもう1枚看板を撮った。これが地名もあることで大きな意味を持つ、と確信している。意味は不明だ(謎)。
 ぴんぽんぱんぽーん、勘違いしている俺に臨時ニュースだ。R12の起点は、R39の起点とは違う位置だということだ……なぬ?(汗)R12とR40の起点は同一地点だ。そこから数百メートル離れてR39の起点があるのだ。2002年4月の情報。
 また間違えたらしい(−−;


「おんやぁ〜?」
 俺は写真を撮った。
あぁいうの、好きなんだよね」
 つくねも笑っている……また服が変わっている、というか、雪だるまの着ぐるみ(爆)。あれを誇張したかったに違いない、さすが日本一。
 俺はやられたと思いながら、運転を続けた。
 ここで見つけた看板は。
『電波出してもスピード出すな』

 電波も出すな(笑)


 名寄(なよろ)市のデパートで、俺は一休みすることにした。デパートなら食糧確保にちょうどいいし、なにより市街だ、PHSの電波が入る。まずはネットに繋ごう。
 時刻は12時少し前。いい時間だ。俺はまず、車の中で食べられる昼食を探すことにした。この旅行中、3日目だが、いまだまともな食事はない……「おやき」発見。俺の地元では「大判焼き」、外では「今川焼き」と呼ばれているものだ。結構種類がある。一通り買ってみよう。
「そんなに食べられるの?」
「お前も食べるだろ?」
「あははーっ☆」
 つくねはぽんと手をついた。
 ちなみに、つくねの服装は、どこぞのキャラクター、ナコ○ルの衣装だった……変だぜ。
「でも、筑音さんが望んだんだよ」
「そうだったのか…… なんでやねん\( ̄▽ ̄;」
 否定はしない(爆)

 と、ここでPHSの着信音が鳴った。会社からだ(爆)。どうやら休み前に整えていったファイル群の日付が古いらしい(汗)日曜にやる、ということで勘弁してもらった。ってことは、出かける直前まで一生懸命直してたソースファイルが、誰かの手によって古いもので上書きされたということか……あー(涙)

 む。「沖縄シークワサーなんとか」というジュース発見。購入決定。北海道で沖縄を見たら、そりゃ買わねばなるまい。いわばお約束だ。こういうところでためらいなく手がのびる俺に、我ながら感動してしまう(ぉぃ)。好きなものや定番で済ませようなんざムシが良すぎると思わないか?(このあたりからプラス妄想があるのでまともな意見と思わないよう注意していただきたい) 俺は、石川県外から来て一緒に食事をする時は、ちゃんと選択肢を与えているんだぜ。ギャグが通じる連中にはもちろん容赦はしない。

 1.金沢食い倒れツアー
 2.金沢食い倒ればたんきゅーツアー
 3.金沢甘い物ツアー

 ほらどうだ、すごいだろう! 「金沢」と付いているが、金沢だけでなく近隣の町にも足を運んでいるので金沢市内だけではない。
 お勧めは、なんといっても2番の「食い倒ればたんきゅーツアー」だ。腹に残る、重い物を詰め込むタイプだ(爆)。是非みなさんにも楽しんでいただきたい。というかこっちが楽しい(爆)。
 綺麗なのは1番だ、甘い物好きには3番だ。たいして面白くはないが(謎)食べ物としてはお勧めできるものばかりだ。特に甘い物では、ソフトクリームが主流となる。もちろんご飯と一緒に食べる甘い物もある。いろいろ試していただきたい。
 当然だが、すべて「食い倒れ」である……ニヤソ。俺と付き合って食事に行くと、とんでもない目に遭うのは見えている。「私は普通のお腹なんだ!」と言える方はご遠慮願おう……くっくっく。

 わし、だいぶ壊れとるな\( ̄▽ ̄;

 さて。
 名寄ではおやきを堪能したわけだが、さすがにこれだけでは物足りない。一緒にコアラのマーチを食べる(ばかたれ)。

 進路は北である。


 1時間ほどで、立ち寄った道の駅が、美深(びふか)である。
 ここでは、つくねの意見により、旅のお供が増えることになった。
ほー
 実に安直な名前だ\( ̄▽ ̄;
 ふくろうのぬいぐるみである。直径は30〜40cmくらいだろうか。平気で座席を一つ使うという、車内には案外向かないキャラクターだ。もちろんというべきであろう、つくねも張り合ってかふくろうの着ぐるみだ……。
 それにしても、ここはふくろうが実に多い。置物、看板、グッズ、名称。俺も旅行の後、8月に入ってから人から聞いた話なのだが、ふくろうは、アイヌの原住民にとって、神の使いなのだそうだ。この道の駅では多くのふくろうの姿を見ることができたが、北海道内では本来はどこででもふくろうの置物があってもおかしくはないのだろう。
 俺には縁遠い話だ(汗)もう少し、情緒、というものが欲しい今日この頃。

「あれ? 温泉には入らないの?」
「……」
 俺は無言だった。せらちゃんは駐車場を出ていた。
 確かに、俺はつくねの言うように、ここで温泉に入る予定だった。なのになぜ。長居せずに出発してしまったのだろう……
 ご想像にお任せする。


「ありゃ。スタンプラリーなんてあったのか!」
「えっ、気づいてなかったの?」
 キャミソール、というものだろうか?(下着じゃないのか……よくわからん)胸元より上の、肩や首筋の肌があらわになっている薄手の上着。目のやり場に困るので見ないようにする(@@; 「俺は男だ」と、実感する時だと思う……だぅ。

 俺はしまったと思った。
 道の駅、音威子府(おといねっぷ)。ここで、汗ばんだ手足を洗うために近くの水道へ向かい、そしてせらちゃんのほうへ戻る時のことだった。建物の入り口に、大きなポスター、「道の駅スタンプラリー2000」とあるではないか……道の駅マニアではないにせよ(謎)こういった簡単なイベントは、ここを通ったという記念にもなる、北海道へ入って1つ目の道の駅「YOU・遊・もり」から始めておけばよかった…… 悔しい。
 さておき、俺もスタンプラリーに参加だ。スタンプシートを1部……いや、真っ白なもう1部も貰っておこう(あかんって)、手に取り、さっそく1つ目のスタンプを押した。
「ここから始めるってのも、なかなかオツなもんだろ?」
「わかんない\( ̄▽ ̄;」
 つくねは困った顔だった。
 そりゃ、俺もわからんさ、あぁそーさ(明後日の方向)


「うっ……」
 時刻は14時半。睡魔がやってきた。一眠りの時間か…… この時間帯は、毎日眠い(^^; 大丈夫、順調だ(何がだ)。
 場所はどこだろう? 道の駅 音威子府から40分ほど走った場所だから…… 天塩川(てしおがわ)を右手に、40kmほど走ったところだろう。建物は何も見えない、ただひたすら畑か草原が広がる、晴れ渡る青空の下。

 俺は、あっという間に眠りについた…… パーキングエリアを探すだけの余裕があったので、まだ意識はしっかりしていたと思う。

 それにしても、ものすごい暑さだ。道の途中にある電光掲示板の温度計は24度を示している。「ここ北海道じゃないのか?」と尋ねたくもなる数字だ。先ほど名寄で見た天気予報では、金沢の最高気温が22度だったような…… 車の中は、もはやサウナ状態だ。あっという間に汗でずぶぬれになり、1時間も経たないうちに目が覚めてしまった。
「大丈夫? 顔色悪いよ?」
 水着姿でうちわをあおぐつくねの姿が……と思ったら、うちわを二つ持っていて、もう片方は俺に風を送ってくれていた。
「大丈夫、顔は悪くない」
「なんでやねん\( ̄▽ ̄;」
 俺は言ってからしまったと思った。でもどうでもいい……。
 ジュースの自動販売機を探していた。


「牛じゃ牛じゃ! 今日の夜ご飯、牛に決定〜」
 俺はアクエリ○スレモンをごきゅごきゅと一気に飲み干す。わずか10秒。ぷはーっ!状態だ。
 先ほどの休憩地点から数分だっただろう、北上すると大型トラックも数台停まれるパーキングエリアを発見した。ちょうど自動販売機もあったので俺は迷わずそこにせらちゃんを停めた。
 壮大な牧場だった。
 このパーキングエリアはこの牧場の入り口になっており、「展望公園」の看板もある。トイレや公衆電話もあるし舗装された山への道へも確認できたことから、夏などは一般の観光客も訪れる場所と想定された。
「もーもー♪」
 つくねは、今度は予想できた牛の着ぐるみで、そこらへんの牛に威圧をかけている。
「威圧じゃなーい」
「だから心を読むなって」
「もーもー♪」
 俺は苦笑いしながら、つくねと、牛と、そして雄大な景色を視界に収めていた。地元の人間しか来ないような場所とも言える、しかも地元の人間であれば、もっともっと山や草原の奥に行ってしまうのだろう……。
「……ちっぽけだよな」
 俺は呟いた。意味が強すぎて自分でも把握できないが、これがいま一番適当な言葉だと思った。ほんとうは口にする言葉などなかったのかもしれない。
 牧場の独特の薫り。そりゃ確かに牛臭いが(笑)またここに来たくなる、そう感じるきっかけって、結構たくさんあるもんなんだな。
「そろそろ行こうぜ」
 俺はデジカメをカバンに仕舞うと、ひとつ伸びを入れた。


 シェルター
 なんとなく核爆弾なんかを思い出すのは俺だけか?
 本当のことを言うと、まずシェルターを見つけたとき、笑いがこみ上げて。
 そのまま通過した。

 なんていうか……認知レベルの範囲になかったものだったので、すぐには自分の頭に入らなかったんだと思う。ただ「面白かった」ものだったんだろう。
 それで、シェルターをくぐり抜けて、1km。
 戻るばかたれの姿あり。

 なので、この写真は北からである。南側ではなく、戻ったためにやってきた北側なのである。
「だからなんだ」と聞かれても俺は困る。

 さて、あらためて、パーキングシェルター。雪が降ったときのためのものだろうか? 俺は考えた。
「雪がたくさん降ったら、外に出られないじゃない」
「俺が考え始めた瞬間に話しかけんなよ……」
 考え直す。
 シェルター、だろう。駐車スペースはあるが、パーキングエリアではないな。つくねの言うとおり、冬に使える物でもなさそうだ。
「えー、冬も使えるんだよ♪」
 ……こいつ、ほんとに何者だ?
「だって、雪がたくさん積もったら、この上を地元の人が歩けるんだよ♪」
「ほぅ、なるほど」
 俺はぽんと手を叩いた。5mほんとに積もるのかどうかは別として。
 それにしても、看板を見る限り、先ほど立ち寄った牧場前のパーキングエリアとさほど変わらないのも事実だ。公衆電話、トイレ、狭いながらも駐車スペース、そしてAMラジオのアンテナが通っている。中は昼間でも常にライトが点灯している。
「まぁ、中の施設が、真冬には役に立たないことはわかった」
「変な認識(^^;」


「到着っ!!(>▽<)/」
 とりあえず、最初の難関(でもないが)稚内市に到着だ。俺とつくねは握手を交わした。
 気にしちゃいけないとわかっていながらも気になってしまった服装……なぜ浴衣なのだろう。左手に持つうちわがポイントだ。先ほど使っていたものとも違う。

 時刻は16時半を回ろうとしていた。旭川市から始まっているR40は、ここ稚内駅の前が終点だ。
「ロシア人かな?」
「……だろーな」不機嫌を隠さない返事。
 しまったと思った。
 つくねと顔を合わすことができず、前を向いたままの俺だ。
 稚内市内に入ってから駅前までは20分くらいかかる。道案内の青い看板にロシア語が出てきたのは、R40を北上し、宗谷(東側)に向かうR238との分岐点を越えてからだっただろうか。ここからなら、わずかな時間でロシアへ渡ることが出来るのだろう。ただ、日本地図はすぐに思い浮かぶのだが、世界地図が出てこなかった(^^;
 不機嫌の理由は実に単純だ。俺の考え方は(?)古い&固いようだ。どうしても外国人に抵抗を覚える。
 会社の仕事で同じ部屋にいるならば、信用する(せざるを得ない)、という意識を持てるのだが、俺にとって、真面目な話をしたことがない外国人は、脅威でしかない。外国人に、いいイメージがないのだ。いま触れたが、俺の考え方は、人を信用することから始まる……なんか難しい話になりそうだ……。

「前に、誰かに言われたことがある」
 意識せず俺はつくねに話しかけていた。
「『おおっぴらで、初対面の人でも気軽に話しているようで、でも人見知りしているよ』とかいったことを、前に言われたことがある」
 つくねは俺を見ている。特に相づちは打ってこない。続ける。
「知らない人に、会うのが苦手だと思っていない。むしろそれまで知らない人だったその人と、話ができるようになることは凄いことだと思っている。
 インターネットを始めたきっかけは、別にそんな難しいことを考えたからじゃない。ぱそきちぃ☆にモデムがついてたから、試そうかな、そんな感じだった。
 いくつかの掲示板やチャットルームを経て、いろんな人と知り合えて、なんとなく話して、『初めまして』じゃなくなって、そのうち常連とかになって、いろんな初めましての人と出会っていった。
 喧嘩して今は二度と口も利かなくなった人も、メールアドレスがなくなって連絡が取れなくなった人も、確かにいるけど、そうじゃない人が、ほんとにたくさんいるんだぜ。北は北海道、南は鹿児島沖縄。『響 筑音です』って挨拶するとわかってくれる人が、もう、インターネット始める以前とは比にならないんだぜ」
 俺は一息つくために、ポカ○スエットのペットボトルに口を付けた。
「そんな、いい出会いの場が、あったんだね」
「あぁ、いい……有益というか」
「悪く取らないで。いいことなんだから」
「それってさ、顔が見えないネットワークだからかな? 顔が見えて、たとえばさ、可愛い女の子が相手だったら、俺の性格ってもっと曲がっていたと思わないか?」
「思わない」つくねは、なぜか即答した。
 俺は少しためらったが、話を続ける。
「ま、まぁ、俺はまだ(一応)20代だから、60超えたジジババよかは、若い人がいいとか話が通じるとか、そんなのは勘弁してもらうことにしよう。じゃあさっきと逆に、可愛くない……失礼、好みじゃない女の子だったら」
「関係ないよ、おしゃべりが好きだから。ううん、楽しいおしゃべりが好きだからなんだよ」
 つくねが続ける。
「出会いと好みは全然関係ないよ。出会わなければ、おしゃべりしなきゃ、元々赤の他人だった人のことなんてちっともわからないんだから。
 性格が合わなくて、それが一期一会になったって、そんなのよくあることじゃない。面と向かってだってネットワークだって、お話できない人のことなんて誰もわからないし、好きになる確率だってものすごく低くって。
 美辞麗句並べられる人が優しいなんて誰も言ってない、自分の意見を言えない人なんてたくさんいるんだよ。自分の悪いところは自分が一番知っていて、でもそんなこと誰も聞きたくない。好きになった人に伝えたいのは、自分のいいところ。なんで痛い目見ようとするの?なんで自分は最低ですって顔するの?なんでそんなに自分を哀れみに思うの?」
「……言ってることが支離滅裂だぞ」
「わたししゃべるのはあんまりうまくないみたい……ごめんなさい。
 でも言いたいことはちゃんとわかってる。自分を大切に思うくらい、人を大切に思いたい、人を好きになるんだったらそんな自分を好きになりたい、それを人に伝えるには、文字だけじゃだめ、しゃべらなきゃダメ!」
 ほとんど息をつかずにつくねは言い切った。息を整えている。
「誰だって構わない、いろんな人と楽しい話をしたい、そうありたいってあなたも自分で言ってるじゃない。
 外国人相手だったら、言語が違うから簡単にはコミュニケーション取れないし、抵抗を覚えるのもしょうがないと思う。でも、身振り手振りでも頑張れば言いたいことは通じるし、ヘタでも少しは英語使えるんだから、気の持ちようだと思うの。
 いつも話してる人だったら、お互いに自分のことを話すのは簡単だけど、初対面の人だと簡単じゃなくって、人と話すのが苦手な人もいる。そんな時って、ちゃんと相手のこと考えてる、過剰じゃなく、自分のことも話しながら。
 それが出来る人って、わたしは尊敬するなぁ」
 つくねの顔が、この話を始めてから初めてほころんだ。
「ほら、亜紀さんの曲で、こんな歌詞があるじゃない。
『どうも誰かに 思われるのは 肩身が重たくてしょうがないね
 旅の空から 勝手に思う そんなほうが気楽で幸せってもんさ』」
「さっき(第3章)俺が好きだって書いた曲の、直後の歌詞じゃないか」俺は苦笑いした。
「この歌詞から、いろんなことが考えられない? 強さとか、切なさとか、悟りとか。
 独りでいることいられることを望む心に、『それって本当に幸せ?』って思う気持ちが見え隠れするよね」
「見え隠れというか…… 今の俺には、後者しか出てこない」
「そっか。
 そしたらやっぱり、あなたはいつでも誰かのことを考えてるんだよ。あんまり嬉しくないかもしれないけど、ぜったい『いい人』だと思うよ。わたしは素敵なことだと思う」
 ……何も言えない。
「独りでいるのは、確かに自由気ままで、他人に気を遣わないから楽かもしれない。だけど、人として生まれてきて、ずっと独りだったら寂しいと思う。
『遙かな時の流れの中で いま僕たちがここに一緒にいることが きっと奇跡』
 こっちはふたりとかみんなでいられることの素晴らしさを描いてる、それは本当に奇跡だと思うの」
 意識することなく、頷いていた。
「顔が見えるから見えないからで、あなたは接し方を変えたりしないでしょ?」
 ……たぶん。
「おしゃべりが楽しければ、老若男女問わず話し続けられるでしょ?」
 ……たぶん。
「気にくわない人だからって、その人を傷つけるような言葉は使わないでしょ?」
 ……たぶん。
「それで、いいんじゃないかな♪ 人との付き合いって。それが優しさのひとつなんだよ、きっと。大切な人や大好きな人に、他の人とは違う気持ちを持ってたって、いいんじゃないかな。
 亜紀さんの、先の歌詞は、それから考えたら残念に思うのだけど……」
 つくねが目を細める。
「優しさが足かせに感じる人もいるけど、でも心からの優しさは、きっと見えない宝物。
 愛情が生まれたって生まれなくったって、どっちでもいいじゃない。出会って、おしゃべりした人が多くなればなるほど、あなたのことを好きになる人は増えていくよ」
 ……嫌いになる人も増えていくけど(^^;
「比率が変わらないなら、全体を大きくすればいいよね。独りがイヤな人は、とにかくお話すること! 少しくらい下心があったっていいから!
 だから、好き嫌いが激しくても、お話するのをやめる、会うのをやめるなんてことは言わないでね。あなたの優しさを待ってる人が、いるんだから」

 つくねは、真面目な顔で俺を見つめていた。眩しいくらいの、笑顔だった。
 見つめられていることが恥ずかしくなり横を向いてしまった。だが、少しだけ「そうかな」と思った時、
「今の顔」
「ん?」
「ふぁいとっ♪」
 びしびしっ。つくねが俺の頬を叩いた。
「なにすんじゃ\( ̄▽ ̄;」
 ふんふふ〜ん♪
 つくねが嬉しそうに笑った。
「もっと気楽に行こ。自分のこと考えるのに疲れてちゃもったいないよ。疲れてる時の考え方って、どうしても消極的になっちゃうんだから。
 楽しい方に、明るい方に進むんだったら、絶対余裕がなきゃね」
 ……その時、あることに気が付いた。
「すまん、ちょっといいか」
「なぁに?」
「迷った」
 つくねがこけた。
 俺はつくねの話を聞くのに夢中になっていたのか、全然関係のない道を走っていた。
 近くの派出所に出頭して(ちがふ)ノシャップ岬近辺の話を聞いていた。
 6敗目。

(余裕か……)


章末。
 旅行の予定に余裕がないのは、言うまでもない(爆)
(文章がまとまっていないのも、言うまでもない(ぉ)
 でも、ちゃんと時間は多めに取ってるんだぞ! たとえば500kmの道のりで、1時間休憩を2回考えてたり、道の駅に入ることも、いちおう休憩……にはならんな。写真撮るのに走り回ったりしてるし(^^;)しかも、休憩は考えてるだけで実際には取らないことも多々あるし。むー。無茶、じゃないんよねぇ、しっかりした意識持って走ってるから。ある程度の疲労レベルまで来ないと、運転中は気が付かないんよー。道の駅なんかで外へ出て歩くとすぐわかるにはわかるけど、足ふらふらするし(@@; なにがなんだか(@▽@;

 ってな感じで、稚内市にたどり着いたわけです。ちょっと思ってた小説風味が出せなくて残念だったりします(謎)
 北は、まだまだ続きます♪



第6章  最北端に冬の空

「ありゃりゃ。看板に『ノシャップ岬』の字がなくなったと思ったら、通り過ぎていただけらしい\( ̄▽ ̄;」
「ごめん、ちょっと一生懸命しゃべってて……」
「気にすんなって」
(俺も少し助けられたから……)
「それよか、早く動かないと日没までに宗谷に行けなくなる、急ぐぜ」
 せらちゃんの進路を、南西から北東に変更する。どうやら看板を見落としたために曲がる道を通り過ぎてしまっていたようだ。
 時刻は、17時まであと15分。ようやくノシャップ岬を拝むことが出来る。
「ねぇねぇ、なんで『ノシャップ』なの? わたし、ずーっと『ノサップ』だと思ってたんだけど?」
「あ、それは、北海道に詳しくなければひっかかると思う」
 俺はつくねにある地図を見せた。北海道には違いないが、最北端とは違う場所だ。
「あ……あれっ? 納沙布?納寒布?」
 そう、ノサップ。
 地図を見ていただこう、北海道は根室市。最東端とも言える場所が、実は「納沙布(のさっぷ)」なのだ。
 今俺たちがいる稚内のほうは、「ノシャップ岬」漢字で書くと「納寒布(のさっぷ)」。なので、「ノサップ」と言っても、ある意味間違いではないのだろう。
 まぁそうは言っている俺も、ここに来るまで「ノシャップ」という文字列を知らなかったわけだが。
「北海道ってさ、納沙布が最東端っていうときどういうんだろうな? 4島を除いて」
「本土って言うのかな?」
「北海道本土」
 二人揃って笑ってしまった。
「なんだか、妙な感じだよ」
「これって本州に住んでないと気分わからないんだろうな」
 俺はノシャップ岬の駐車場にせらちゃんを停める。もちろんデジカメは忘れない。

 まず、たくさん人の集まっているノシャップ岬っぽいところを離れ(ぉ)近くの水族館のほうに向かう。
 む?
稚内恵山泊漁港公園
 看板にはこうある。読めない(爆)わっかない、えさん、とまり、ぎょこうこうえん、かな? 写真の、看板の向こうに見えるのが観光客用の看板だ。俺はあとであっちに行こうと思っている。
 この看板のあるところから右手へ。水族館の壁には(ここはたぶん水族館の裏手になるのだろう)日没時間が表記されている。今日の日の入りは18時40分。あと1時間半ある、宗谷も間に合いそうだ。
 少し進むと、灯台の入り口があった。稚内灯台だ。周知板によると、この稚内灯台は日本で二番目に高いものらしい(古い物なのでもっと新しい灯台が出来ていれば大きい物もあるかもしれない)。
 灯台の周りにはなにかないだろうか?俺はそう思い先へ進んだ。だが、奥にも駐車場があるだけで変わったオブジェなどは発見できなかった。って俺はオブジェを探しに来てたのか?\( ̄▽ ̄;

 そうして、俺は人の多い観光スポットに足を踏み入れた。
 そこには、イルカがいた。東西南北を示すアルファベットが刻まれている。時計の針は間もなく17時を迎えようとしていた。
「なんか、えー感じやな〜」
「筑音さんが好きそう♪」
 つくねがくすくすと笑う。俺はつくねをちらと見て、またすぐ海のほうを見ていた。
 低くなった陽の光だ。海に乱反射する格好が、非常に気持ちいい。遠くに小さく見える船や海鳥が、特別な雰囲気を醸し出してくれる。普段の重さを感じさせない景色は俺のいろんなところを癒してくれるようだから。
 どこかの家族が、カップルが、バイクのライダーが。
 これから俺が向かおうとする宗谷岬から来たのだろうか、いい時間だからなのだろうか、人は多い。「じいちゃんと孫」っていうペアで写真を撮ったり、海になにかを投げ入れたり。なんとなく、みんな観光客っぽい。 <おまえもじゃ(謎)


 17時を過ぎていた。俺は、室蘭から来たというカップルに写真を撮ってもらい(恥ずかしかった(==;)ノシャップ岬を後にした。これから向かうのは、もちろん宗谷岬だ。

 と、ここらへんで実は少し長電話をしたため、時間がずれている(汗)


「頼むっ、頼むからまだ沈まないでくれ!」
 俺はハンドルにすがった。
 左手には赤く燃えている太陽が、今にもその姿を消さんとしていた。空と海を赤く染め、水平線を霞ませている。ここでなければただの海岸沿いの道路。地元の人たちがごく当たり前のように漁に出ている、そんな風景。
 まだ北に陸がある。続いている。まだある、まだ続く。
『宗谷まであと10km』
 そんな看板が憎らしい。時速60kmでも10分かかってしまう。
 日没まで、あとわずか。
(メロスは、こんな気分だったのだろうか?)
 この旅行記をつけながら俺は、そんなことを考えた。メロスは走った、森を、山を、海を、って違う\( ̄▽ ̄; 時間も距離も関係ないっちゅー(@@;
「あと、3分」
 つくねが呟く。聞こえるように言わないでくれ……(汗)下手にノシャップ岬の日没時間を見てしまったもんだから、時計見れば沈んでしまう時間がわかってしまうのが狂おしい。だが、確実にゴールは見えている。
 石川県、金沢市。そんなところに住んでいる俺が、この1500kmも離れた、北海道の、日本の最北端に向かっているのだ。あとわずか。夢だった最北端制覇が、もう手を伸ばせば届くところに待っている。もう迷うことはない、ただひたすら、その道を走るのみ。
 時計の針は、18時40分を回った。
 ちなみに、針があるような時計は持っていない(爆)。


「がーそ(T▽T)間に合わなかったぁ〜〜〜」
「なんでひらがななの?」
「カタカナにしよう……
 ガーソ(T▽T)」
「(ニヤソ)」
 つくねは妖しい笑みを浮かべた。
 時刻は、18時45分。
 日は、沈んでしまった…… 7敗目を喫した。
 西の空には、余韻を残すことなく静かな灰色が広がっている。特別な色はなくなった。ただ、静かな夕暮れだった。
「……」
「筑音さん……」
 スクッ。
「筑音さん?」
 俺は立ち上がった。デジカメを片手に。
 駐車場のほぼ真ん中に車を停め、俺は外へ出る

 ぴゅぅ〜〜〜〜〜〜。
「めっちゃさぶー(T▽T)」
 冷たい風が俺を襲った。

 パシャッ
 パシャッ

 俺は、何かに取り憑かれたかのように、シャッターを切った。すぐに手がかじかむ。手首にストラップを巻いていなければデジカメを落としてしまいそうだ。しっかり構える。それでも手は震えていた。
 なんという寒さだ。網走では雪が降っているというニュースをラジオで聞いたばかりだが、まさか5月に入ってもこの寒さとは……俺はコートのジッパーを喉元までしっかりと上げる。首に巻いた青いタオルも、あまり意味がない。
この人、地図を作ったんだっけ?」
 つくねも車を降りてきた。格好は……毛糸の帽子、毛糸のマフラー、分厚そうなコート。足下は長いスカート……うーむ。防寒対策は完璧だ。
「そりゃ伊能忠敬じゃなかったか……わからん、ちゅーか忘れた」
 間宮林蔵。小学校か中学校の社会の時間に出てきた名前だ。詳しいことはちっとも覚えていないがなにかしら記憶の片隅に残っている。樺太に関係あることは間違いない。
 む? 宗谷岬の楽譜と歌詞ではないか。黒の石碑に白の文字で。
「俺は歌えるぞ」
「確かカラオケで850点とか取ってたよね」
「……そりゃ2週間後(5/18)の話なんだが……なんで知ってるんだ?」
「あはは☆」
 俺は写真を撮る……が。
 手がかじかんで、ぶれて、うまく撮れない(;;)……3枚、4枚、5枚。ようやく落ち着いた画像になった。4枚目が一番ブレが少ない。それ以外のデータを消去する。メモリカードは便利だ。

「あれっ!? ライトアップされてるよ!」
 つくねが叫んだ。
「おー、ファンタスティックじゃねぇか!(ジャイアン風)」
『日本最北端の地』が、不思議な色を帯びているのだ。紫とも言え、緑とも言え、オレンジとも……当ててる光がそれだけあれば当たり前か。とにかく、なかなかの光景だ。この日没直後の美しさも良い。
「……ほら、寒いはずだよ、あれ見て」
「ん?」
 国道の上の電光掲示板を指さしていた、俺も指の先を見る。
「げっ 1度って」
 俺はつくねを促し、せらちゃんに戻った。

「こんなに寒いもんなんですか?」
 俺は岬の向かい側、土産屋に入っていた。つくねは嬉しそうにきつねのぬいぐるみを触っている。
 なんでも、5月に入ってここまで寒いのも珍しいらしい。東の、知床ではまだ雪が積もっているらしい。
 ちなみに、現在19時20分。この土産屋は19時で閉まるらしい……タイムオーバーだったようだ(@▽@;


章末。
 長かった北への旅路はここで終わりです。これから南への道が待っています。
 21時から翌日2時まで、宗谷岬から数km離れたコンビニの駐車場で一眠りしてました。コートを着て、毛布をかぶり、そして足下にはタオルケットを巻き付け。
 車のエンジンをかけたままで寝るわけにいかないので、防寒対策をしっかりして、のつもりだったのですが、やっぱり寒くて(^^;)3時の目覚ましの前に目が覚めてしまいました。足は凍傷になってしまったかのように冷たくなってました……もう少し気温が低かったら、やばかったかも(ぉ



第7章  札幌タウン

 さて、一眠りして体力を回復させた俺は、再び宗谷岬まで戻った。夜明けを見るためである。
 2時過ぎに目が覚めたあと、コンビニで買っておいた食糧を腹の中に収め、軽く運動する。気温は相変わらず1度だった。が、やはりどきどきしていた、期待が胸を膨らませていたのだろう、少し動いただけで体力は元に戻っていた。
「やっぱさぶい(T▽T)」
 1分持たなかった(爆)。
 エンジンをかけたせらちゃんの中に戻る。つくねが取り出したタオルを受け取り、動いて出た汗を拭い取る。いったいどんな運動をしたら1分も経たないうちに汗をかくのだろう(謎)。
 3時半を過ぎた頃だ、宗谷岬手前(西側)にある「間宮林蔵」のなんやらわけのわからん看板を見る。「稚内市教育委員会」の文字が、なぜか寂しく感じた。あまりに寒いので、せらちゃんの中で暇を潰す。日の出の5時過ぎまで、あと1時間
 しばらく経って、俺はコートを身にまとい外に出る。それを見たつくねも出てこようとしたが、すぐ戻るからと一言告げて一人で建物の前に行った。
 そこには、地図があったからだ。稚内市全体の地図と、ここ宗谷が大きく描かれたものだ。稚内市街地から宗谷までは、R238を使う。R238は東へ続き、網走市まで続く。北海道を一周したことのある人は、必ず通る道だ。来年の夏にでも、俺はここに再び訪れようと思っている……まだ先の話ではあるが。

「わぁ、明るくなってきたよ! もうすぐ夜明けだ〜♪」
 さきほどまで薄暗かった海に、淡さが出てきた。時計は5時ちょうど。
「うーん、あとちょっとだで〜〜〜…… って、おっさん!! なんで最北端こえて、海の中で作業してんねん!!
 あぁ、やられた……どこぞのおっさんが、朝早くから歩いて海に入り、漁をしているではないか(滅爆苦笑)
 俺は、笑いながら頭を抱え、そして。
「あのさぁ」
「ん? なぁに?」
「日の出、見なくてもいいか?」
「あはははは」
 つくねは苦笑いして俺を見た。残念そうだが、特に反対している顔ではなかった。
 俺は、最北端を後にした


「眠い(T▽T)」
 6時過ぎ。通称オロロンラインと呼ばれる道の始めで、俺は睡魔に襲われた。ちょうど見つけたパーキングシェルターにせらちゃんを停め、1時間の睡眠を……だって、地図見たらえんえんと直線だし、おもろそーやったし(^^; 眠いまま走るなんて、もったいないぜ。
 とりあえず向こうの利尻(りしり)島を見て、サロベツ国立公園の看板を過ぎ、「どこが公園なんやろ〜?」と呟いてみる。俺とつくねは海と反対側を見る。だだっぴろい山と丘と草原と。
 よくわからなかった(^^;

「おろろ〜ん」
「どらえもん3巻〜」
「大魔境〜」
 わかる人にはわかるだろう、おろろ〜ん♪

 南下を続ける俺たちの前に、敵はなかった(なんじゃそら)せらちゃの上、日光を遮るカバーを家の車庫に置き忘れたために、日はイヤと言うほど、俺を照らし続けた……暑い! つい数時間前、1度やったやん! いま見た電光掲示板の温度計、なんでまた25度やねん!(爆)
「そういえば、昨日の今頃も、24度とかなかった?」
「……宗谷は別世界らしい」
 俺は窓を全開にした。つくねは。ピンクの半袖のシャツに白のミニスカート。日の光をまともに浴びないよう、麦わら帽子をかぶり、すだれを下ろしていた。もう驚かないと決めていたのに。


 道の駅富士見(ふじみ)にて俺は一息ついた。いや、一息つく間もなく、俺はうろちょろし始めた。
「なんじゃのんここは〜」
 午前8時。日の光が実に眩しい。
 上へ登ってみる。自己中に停めてあるせらちゃんが実に優雅に見える(爆)
 ……。
 暑い(==; 俺は運転席に戻った。
なんだかな〜〜〜」
「えー、可愛いのになー」
「あれはないだろ」
「まぁ……気分の問題」
 モモちん。きっと、モモンガだからモモちんなのだろう。
「きっと、って(^^; 間違ってないと思うよ」
 そして、あれ
 ……俺は無言で道の駅を出発した。


「わ、これかっこいいね」
 先ほどの道の駅羽幌(はぼろ)をさらっと払いのけると(違)次にやってくる道の駅は小平(おびら)だ。鰊番屋(にしんばんや)という名前が付いている。松浦武四郎という人の像が立っている。遠くから眺めると、おっさんはともかくなかなか素晴らしい。
 ここでの見所は、ただひとつだ。見所じゃあない( ̄▽ ̄; とりあえず建物の中に入ってすぐ、俺はそれを目にすることになった。というか驚いた。
 突然水槽から何かが飛び出たかと思うと、地面の上でそれがびたびたと跳ねたのだ!
「鰊かな? なーんて」
「魚は見ただけじゃわからん(汗)」
 俺たちはただその様を見守っていた。
 中から出てきた、割烹着を着たおっちゃんが、拾い上げて水槽に戻した(^^;
「お、なんか泳いどるぜ」
「助かって良かったね」
「魚だったのか……」
「どういう意味よ(^^;」


 留萌(るもい)に入った。留萌市、というだけあってこれまでの小さな町や村とは規模が違う。ここで俺が気になったのはひとつ。
ルルモッペ大橋
 もちろん、ネーミングセンスに惹かれたというのは言うまでもない。
 大きな看板がある。何かを感じた俺は、写真を撮った。それがなんだったのかは、もはや永遠の謎である。
 あとで(2001年夏に)知ったのだが、このルルモッペ大橋を通れば、R232とR231の経由は交差点まで行かなくてもよく、道のりにして数百メートル、ショートカットが出来るのだ。わざわざ国道を選んで走っている者は使わないであろうことは言うまでもない(^^;


 南下を続ける俺たちの前に、ついに敵が現れた。日光でも暑さでもなかった。
 R231、増毛(ましけ)国道を進んでいるときだった。急に向こうのほうの車が停車した。信号も停まれの標識もないのに、自然な減速で。トンネルの下、俺は怪しいと感じ、対向車線を使った追い越しをすることなく、前の車に続き、停車した。前のほうでは、車から降りてくつろぐ人々、バイクを降りてヘルメットを取り海を眺めている。通行止めか? 俺はせらちゃんを降り、前で雑談をしている30代であろう男性連中に声をかけた。すると。
『発破作業』
 話には聞いたことがあるが、目の前で起こっていたとは驚きだ。そう、トンネル内の危険な場所を爆破によって取り除き、トンネルをより安全に通行できるようにするための作業だ。
 この発破作業は、1回につき後片付けも含めて2時間ほどかかるらしい。もし運が悪ければ2時間ここで足止めを喰らったことになる。俺たちがここを15分程度で通過したことは、それはそれで運が良かったのかもしれない。エンジンを止めたせらちゃんの中で俺はAMラジオを聞き、つくねはかもめを尾行して食糧確保に努めていた。
「遊んでるだけなのに……」
 予想できたので放っておいた。
 負けは、感じなかった(謎)


 R231を下る。石狩平野、石狩川を越えると間もなく札幌市だ。俺たちはその手前でドライブインに入り、昼食を取った。
「あらら、筑音さんにしては珍しい。大きなレストランでご飯食べるんだ」
 ……むむむ。
「俺は、毎回ちゃんとした飯が食いたいんだ!」
 両手を上げて、声を荒げる。
「せっかく旅費交通費ケチって来てんだから、その分うまいもの食ってかなきゃ、なんのための旅行なんだかわからないじゃないか!」
「あらら、筑音さんにしては珍しい。そんなこともちゃんと考えてたんだ」
「どやかましい(T▽T)」
 遠いところに来て、走って帰るだけではもったいない。俺はそう感じていた。そう感じたのが宗谷を離れてから、というのも確かに否定は出来ない。稚内まで行ったものの、結局まともに食事をせず、コンビニで食糧を買い込んだ時に寂しさを感じた。そんな食事もまともに取れないような予算で北海道へ渡ったわけではない。後でガソリン代を少し間違えて計算していたことには気が付いたが(^^;
 稚内にもいろいろお店はあるのに。寂しさを感じるのは、バカな話だ。
「……二人でご飯食べるって、すごいことだよな」
 俺はぽつりと呟いた。


「わー、テレビ塔だー、戻ってきたよ〜♪」
 つくねが窓から身を乗り出す。ごく普通に、水色のTシャツにジーパンという姿だ。
 そう、戻ってきたのだ。一昨日(4/30)の23時頃に俺はここを訪れている。R5,12の分岐点だ、ということを今さら誇張する必要もないだろう。今日の目的はやはり、「国道元標」……
「そうなの?(^^;」
 いや、違う。
「俺、修学旅行の時も、ここを歩いているはずなんだけど、全然思い出せないんだ」
 そう、確か、雨の札幌? いや、雨が降っていたかどうかもうろ覚えなのだが、俺はすすきのでラーメンを食べた後、大通公園を経てどこかのデパートに入り、そして宿泊施設へ戻った記憶がある。そんな程度の記憶しかない。当時の俺にとって、修学旅行とはいったいなんだったのだろうか。こうして記憶の糸をたどっていく限り、当時はあまり旅行が好きではなかったのかもしれない……バス酔いがひどくて意識が朦朧としていたという記憶はある(汗)もっというと、時計台の場所も知らない(滅)
 さて、話を戻そう。俺は大通公園の道沿いに面した100円パーキングにせらちゃんを入れた。もちろん、大通公園を歩くためである。
「札幌ラーメン、食べるの〜?」
「いんにゃ、今食べると(^^;」
 時計は14時を回っていた。さきほど石狩川の近くで昼食を取ったばかりなのに、いまラーメン1杯がちゃんとお腹に収まるとは思えない。しかも、夜ご飯は一人ではない。一緒に夜ご飯、という約束をしていただいたのだ。
 まず向かった先は、大通公園の西端、資料館のほうだ。ここからテレビ塔に向かい、大通公園を端から端まで歩くつもりだ。資料館自体にはあまり興味はない。資料館というと、写真撮影が禁止されている場合が多いからだ。それに対して、大通公園は、変わったオブジェが多い上に、これだけ天気がよいと歩いているだけでも気持ちが良いだろう。

 大通公園 10111213141516171819

「なんでおねーさんが、映ってるのかな〜〜〜?」
 細目にネコの口(=w=)☆ で聞いてくるつくね。俺はさらっと答える。
「ちびっこにデジカメの液晶画面見せて、そのお母さんだ」
「へ〜〜〜」
「……なんだよその言い方は」
「好みのタイプ?」
「違う\( ̄▽ ̄;」
 俺は、テレビ塔を後にした。


 さて。やって来たのは、どうしてもきちんと撮影できなかった、あれだ。
国道元標
 赤れんがの建物の入り口だ。地図を見ると「旧本庁舎」と書いてある。住所だと、北3西5、だろうか。道庁と札幌支庁はこの赤れんがの建物の入り口、国道元標のあるところから見るとちょうど反対側に位置する。
 やはり昼間のほうが写真は撮りやすい。なぜ一昨日はあんなに悩んでいたのだろう、と不思議に思ってしまう。軽く入り口を見渡すと、どきどきしながら敷地内に入る。
「捕まるようなことしてるから?」
「違う\( ̄▽ ̄;」
「あぅ」
 俺はつくねのデコをびしっと叩く。
 そして、改めて赤れんが庁舎に立ち向かった。
「……か、かっちょええ! 昔風だ」
「どういう意味なんだろ?(^^;」
 俺は入り口へと向かった。
「わ、『ご自由にご見学下さい』だって。入ってみようよ♪」
 つくねはさっさと中へ入っていく。俺もその後に続いた。

 楽しかった(棒読み)実は、あまり覚えていない。今の俺の頭には、レベルが高すぎてついていけなかった。まだまだ絵画や模型といった作品の良さがわからない。ガキんちょ心で地図を見たり、電車の歴史を見たり。そんな程度でしか見ることが出来なかった。
 また別の機会に、ゆっくり見に来ることにしよう。


 100円パーキングに戻った時には、午後4時半を回っていた。俺はせらちゃんを出発させると、ガソリンスタンドで洗車し、南36条あたりにあるお風呂屋さんに入った。その後、インターネットで知り合った札幌に住む友人と夕食を取り、そして札幌を後にしたのであった。


章末。
 稚内は宗谷から、札幌までの距離は約400kmでした。この時わかったのは、1日24時間のうち、半日を長距離ドライブに使い、残りの半日をぶらぶら過ごす、ということがどんなに身体に良いか、ということでした(^^;
 夜ご飯は牛タンのお店。結局わたしは札幌をあまり知らない(&調べていない)ので、知ってるお店をチョイスしてもらったのです。旭川ラーメンを食べる、という案もあったのですが、お店が閉まってました。夜8時を過ぎていたこともありましたが、なんだったかの理由で、閉まってました。なんだったかな…… 店舗改装? x曜日休日? うーん…… 覚えてませんー
 せっかく歩いていって、お店が開いていなかったのは負けでしょう。8敗目(^^;

 進路は南です。



第8章  函館に、別れを告げる。

 定山渓(じょうざんけい)パーキングエリア。道の駅ではない。
 友人と別れた俺は、修学旅行で立ち寄った目的地、洞爺湖を目指した。もちろん、有珠山が噴火しているので近づけないことは知っている。ただ、行けるところまで行こうと思ったのだ。
 札幌市からは、R230を南下する。ひたすら山道だ。5月2日、午後10時を回った頃、俺はダウンした(汗)大雨の山道の、車線が見えないのだ…… 目が弱っている。
 日付が変わり、5月3日の午前4時。運転席で毛布をかぶったままの俺は、大泣きの空を眺めているだけだった。
「やまないね」
「うーん」
 せらちゃんの天井は、ガラスだ。落ちてくる涙がばたばたとガラスを叩く。大雨が続いている。
「……待っててもしょうがないし、行くか」
 俺は狭い車内で毛布を畳み、後部座席に置いた。倒していたシートの背を元に戻す。その時つくねを見て、ぎょっとした。また驚いてしまった。
「なんでカエルやねん」
「可愛いでしょ♪」
 パジャマだった。


 道の駅中山(なかやま)を経て、南下を続ける俺の目に飛び込んで来たのは、
洞爺村……」
 暗い雲に覆われ、雨音という静寂に包まれていた。
 知っての通り、洞爺湖の南に位置する有珠山は、2000年3月に群発地震と地殻変動を伴って噴火した。近隣の住民は安全な場所に避難しており、まさに人っこ一人いない死の町と変わり果てていた。
(この時の状況を表現するための言葉として用いたが、適当な単語ではないかもしれない)
 洞爺湖が見えてきた。俺はあるドライブインのパーキングエリアにせらちゃんを停めた。
「人がいる(^^;」
 そう、ここは一般車両が入れる最後の駐車場なのだ。これより南は、「通行止め」の看板が出ており、道は封鎖されていた。興味本位で入っていくのはたぶん構わないだろう、痛い目を見るのは自分だけだ。しかし、避難を余儀なくされている人のことを考えると、これに従わざるを得なかった。ビデオカメラを回すのはテレビ局の作業員だろうか、それとも国の仕事か? いずれにせよ、ここから監視を続け、何かがあればすぐに全国に情報が渡されるのだろう。仕事の邪魔をしてはならない。
 俺はせらちゃんを降り、ビデオ撮影の邪魔にならないよう、出来るだけ洞爺湖に近いところまで歩いた。湖の手前はしっかり見える。しかし、その向こうはもやに煙っていた。
「……あれは噴煙かな」
 つくねが呟いた。しかし、俺は答えられなかった。
 写真を撮る……。

 7時半。洞爺湖を後にした。


 先ほどの洞爺村の香川からR230は使えないので、迂回路の指示のある道道に入る。ここから南西に向かい、内浦湾(太平洋?)沿いのR37に出るのである。R37は海沿いの道である。来年でも北海道を一周する時には、必ず通ることになるだろう。
 R37に出てからは、長万部まではすぐだった。R5にスイッチし、ひたすら南下し続ける。
 函館に到着した時には12時を過ぎていた。


「はこだてー」
「トラピスチヌ修道院」
 函館駅や五稜郭からさらに東へ数キロ離れたところにある、トラピスチヌ修道院。その昔来たはずの場所だ。
「なーんも記憶にないな…… ここって、こんなところだったっけ?」
「わかんないよ(^^;」
 俺はそばの駐車場にせらちゃんを停めると、傘を差して前の道を歩いた。
 修道院の入り口。門がある。ゴールデンウィークということもあり、人は多い。しばらく待っても出入りする人の姿は消えなかったので、無人の写真を諦めてそのまま中に入った

「あれ……? なんか変だぜ」
「だからわかんないんだってば」
 独り言だったんだが……俺はそう思った。何故だろう? 前に進む。
 聖母マリア像? が、ここに居る……はて?
「聖母マリア、って、人間だったんだっけ?」
「さぁ」
 よくわからない。
 インターネットで調べた限り、「聖母マリア」という名を使った奇跡の話はいくつか知ることが出来た。ルルドの泉は有名な話である。ここにはルルドの泉を復元したものがあった。しかし、「現れたマリアは最近の過去の姿であり、二千年前の女性とはほど遠い姿をしていた」とか「話によってマリアの姿の特徴は異なる」とか、否定的な意見が多い。集団幻影である、という説がよくされる。では、マリアは何者だったのか?
 キリスト教で有名なイエス=キリスト。有名って変だ(^^; その母親がマリアである。俺は宗教の分野には手を入れないし、見えない神を信じるつもりもない。俺が神だ。
「話が飛んでった\( ̄▽ ̄;」
 失礼、話を戻そう。ただし、あくまで例であり、想像である。俺はキリストなんぞ意識した憶えはないし、一般的な奇跡を信じるつもりもない。
 もしもキリストが神のつかい、イコール神的存在だとするならば、そのキリストを産んだ母親はなにか? 神的存在、もしくはそれに近い存在であろう。だが、キリストにしろマリアにしろ、人間だ。なにか不思議な力は持っていたとしても、刺されて死ぬなら人間なのだろう。人間には死ぬまでに発揮することのない力が9割もあるだとか、死を超越するだとか、魂の死はあり得ないだとか、小難しい話はあるのだが、どれもあんまり信用できたもんじゃない。
 結論は、人間として生まれて、人間として死んだんじゃないか、というところだろう。キリストもマリアも。
「神じゃなくて、人間を崇めるの? わけわかんねー」
 近くにキリスト教徒が居たらはたかれそう&場違いだと感じ、俺は心の中でそう思った。
「言わなくて正解」
「……変態」
「失礼ね、別に聞こうと思って……」
 中途半端なところでつくねは口をつぐんだ。それ以上話そうとはしなかった。
 少し待っていたがつくねが話し出そうとはしなかったので、俺は敷地内を回りながらもう少し考えた。
 世の中は広い、何があっても不思議ではない、そういうことかな?
 俺は宗教団体を信じるつもりはない。逆に、俺以外の人間が、宗教団体を信じているかもしれない。そこらへんは自由だ。それを押しつけられるわけでもないし、強制されるわけでもない。なんでもない話だ。ただ、現世でもちゃんと、人を敬う気持ちとか、暖かく包み込む気持ちとか、罪を許し良くなるほうへ誘い助けるとか、そんなことを心から出来る人は、すごいと思う。自分を抑えることなく人を思いやるなんて、俺には出来ない。俺の優しさには裏がある(爆)
「あるんだ」
「ある」
 真面目な顔で答えてしまった。しまったとも思ったがもう遅い。言葉が他に思い浮かばなかった、という理由もあるが、その時つくねの顔を見ることが出来なかった。
 と。
「あ!」
 わかった、最初に感じた違和感。俺は指さした
「あのくぼみがどうかしたの?」
「あそこに、マリア像があった!」
 ……ポン。考える時間があった後、つくねが頷いた。
 そうだ、マリア像は、こんな門を入ってすぐの、誰にでも見える&触れられるようなところにはなかった。建物の壁に作られたくぼみに、ちょこんと収まっていたはずなのだ。
「確かに、大きさもぴったしだね」
「解決だぜ〜」
 俺はいい気分で、土産物を売っている建物に入った。


「で、結論は?」
 一通り回って出入り口の門をくぐった時に、つくねが聞いてきた。俺の答えは、ただひとつだ。
「若い女の子は、こんなとこ来たらあかんわ」
「そんなんなの?\( ̄▽ ̄;」
「いや、そうだろ。まだまだ無限大に広い世の中を捨てて入るなんてもったいないぜ。それに、ここに来るくらいなら、俺んち来てあそ」
 スパーンッ!!
「……痛いゼヨ」
「だまらっしゃい」
 俺の前を歩くつくねは、両手でハリセンを持って、笑っていた。
 駐車場へ戻ったのは13時頃だっただろうか。俺は昼食を取るため、函館の町へ戻った。


 函館山は、函館駅から南西に位置する。一般的には、函館山ロープウェイで山頂へ登り、ロープウェイで山麓へ戻る。車であがる場合は細いくねくねした山道を登っていかなければならない。
 その山道への入り口がどこなのかしばらく迷ったが、俺は看板に従って山頂の駐車場へたどり着いたのだった。

 函館山 

「むーん、雨かー」
 せっかく登ってきたのだが、周りは霧に覆われていて、ちっとも面白くなかった(汗)。
「次回まわし……」


 坂道
 函館港を見下ろす坂道。函館山の坂である。
 高校の時に、いたく感動した坂がある。
「へー、どれなの?」
「わからん」
 がくっ。
 最近つくねはこけてばかりだ。
「まぁ、一通り回ってみるさね」
 俺は、せらちゃんに乗ったまま、数本の坂道の上から海を眺めてみた。わかるかもしれないし、わからないかもしれない。別にどっちでも良かった。

 坂道 

 いくつかの道を走り、そしてある坂道の一番上で俺はせらちゃんを停めた。
元町公園
 雨は降ったり止んだりを繰り返している。ちょうど雨粒が落ちてこなかったので、俺は公園に足を踏み入れた。
「普通の公園じゃないな」
「ほら見て、観光地っぽいよ」
「観光地だからかな?」
「じゃあ公園じゃないのかな?」
「名前に騙されてる?」
「うーん」
 端から見ると間抜けな会話である。
 この公園で知ったのか、後から聞いたのか、ちと覚えていないのだが、ここでは民族衣装を着ることが出来、写真を撮ってくれるサービスがある。
「お前はいい」
「まだ何も言ってないのに……」
 公園の敷地から、函館港を眺めてみる
 坂道、空、海、建物が作り出す一点透視図。
 言葉など必要ない。曇り空は残念だが、それも構わない。俺はただ、瞳に映るその下り坂に見入っていた。


 17時半。函館市の坂道を後にした俺は、特に何をするわけでもなく、フェリー乗り場へと向かった。あと4時間ほどで、俺は北海道の地に別れを告げるのである。
 フェリーの出発時刻は22時ちょうど。到着は青森市で、3時間半ほどの航路となる。たぶんこの時間は、ぐったり眠ることになるだろう。自分が思っている以上に体力はなくなっているはずだ。
 ならば。
「夜ご飯なに食べるの?」
「寝る」
「え〜〜〜〜? もったいなーい」
 18時にフェリー乗り場に到着した俺は、毛布をかぶった。耐えられなかっただけである……。
 今となっては、どうして食事を取らなかったのだろうと後悔しているわけだが…… それはともかく、洞爺湖温泉、昭和新山、新千歳空港以外の、修学旅行で通った道はすべて経由してきたことになった。
「行けなかったの、残念だね」
「まぁ、自然の猛威にはかなわないから。次来た時に通ろう」
「次。また車で?」
「もちろん」
 北海道は、車で走る場所だ。俺は心からそう思う。3日前に函館に入ってから稚内を往復した走行距離は、1450kmとなっていた。函館と稚内を最短ルートで走っても600kmあるのだから、それなりにうろついたというわけだ。しかも、道西、日本海側だけ、北海道大陸の2割ほどしか走っていないのだ。それにも関わらず、いろんな場所でいろんなルートで、今までに感じたことのない高揚を憶えたのだ。いったい残りの8割は、何を思わせてくれるのだろうか?
 俺の北海道への興味は、離れる今となっても募るばかりだった。
「また来られるといいね」
「あぁ……おやすみ……」


章末。
 22時ちょうど発のフェリーに乗り込み、ほぼ予定通りの1時45分に青森港に到着しました。雨が降り、しけっていたはずの海を普通に越え、予定通り3時間以上ぐっすり眠っていました。合わせて6時間以上の睡眠を取ったので、青森に着いた時には、体力も精神力もばっちり回復していました。
 それにしても、今となっては、R5という同じ道を往復して帰ってきたことにも後悔していたり(^^; 1998年版の紙の地図しか持っていなかったので、まったく情報がなかったのだわ。旅行(遠出)するときにガイドブックを買っておくことは、重要なんだなと思ったのもこの頃。

 家に帰るまでが、旅行です!!(>▽<)/



第9章  Route4

 真夜中。街灯が眩しく道を照らす片側2車線の大きな道。もう間もなくでR7に出る。青森港フェリーターミナルを出てすぐのところだ。
 雨は小降りになっていた。傘を差すほどでもない。俺は、そんな道の真ん中でせらちゃんを停め、ハザードランプを点滅させ、そしてそんなせらちゃんを見ていた。
「どうしたの?」
 つくねは何がしたいのかわからない俺を見ている。
 ひとつ、思い出したことがある。それは、あの写真を撮ったときに、そばにエンジンをかけた車がいなかったか、ということだ。
 エンジンをかけたままのせらちゃんは、後ろから見ると白いもやに包まれている。
 排気ガスだ。
「あ、もしかして……」
 つくねも気が付いたのだろう、俺はその様をデジカメに写した。

 パシャッ

 次に、エンジンを止め、少し待ち、排気ガスが収まった状態でもう一枚。

 パシャッ

 そしてすぐにノートパソコンにそれを表示させてみる。
「あ、映ってる映ってる(笑)」
「……これか(汗)」
 後に撮ったほうは、特別変わった風もない、ただ黒い物体が街灯に照らされているだけだ。
 先に撮ったほうには…… 左半分が白いもやで覆われており、それがまるで、何か恐ろしいものを見たまま凍り付いた人々の顔に見えたのだった。
「なぁ、弘前で、俺が写真撮った時、隣にエンジンかけっぱなしの乗用車が2台、停まってなかったか?」
「さぁ…… 覚えてないよ」
 つくねは困った顔で答える。俺も記憶はあやふやだ。だが、確か車数台の脇を通り、看板の前へ出たような記憶があるのだ。
 俺は、今撮ったばかりの写真を2枚、削除した。つくねはにやにやしていた。
「消しちゃったんだ〜」
「うっさい」
 俺は目を閉じたまま苦笑いして、ノートパソコンを閉じた。
 R4の制覇が始まった。


 R4は、日本で最長の一般国道である。距離は740km。東京は日本橋から、先ほど通り抜けた青森市までの東北道だ。盛岡から東京までは高速道路の東北自動車道とほぼ似たような場所を走っている。東北本線沿いに、R4沿いに町が栄えたのだから、それに近い場所を高速道路が走っているのも当然の話である。
 R4を初めて走ったのは去年の2月、まだ大学4年だった頃だ。渋谷で催された、アーティスト泉川そらのライブコンサートがここであり、オフ会も兼ねて集まることになったのだ。そらさんには、このライブの日のちょうど1週間前にも金沢でもお会いしている。まぁ個人的には、有名人やライブには興味はなかった。ライブの始まる10分前まで、入ろうかどうかを迷っていたくらいだ。しかし、「ここまで来て、後で『入っときゃ良かったな〜』と後悔するくらいなら」と考え、当日チケット3000円を払って中に入ったのである。
 それほど広くはなかった会場は満員だった。俺は椅子に座る必要もないと入り口付近の壁によしかかり、ただ傍観者であるかのごとく前を眺めていた。いや、そうしているフリだけで、実際には「早く始まらんかい!」とちゃんと興奮していたり(^^;
 東京の渋谷へは、福島県の会津若松(あいづわかまつ)でR49を離れて猪苗代湖(いなわしろこ)南の山道R294を走り、猛吹雪と路面凍結の中をかけぬけ、白河からR4を突っ切って行った。帰りは宇都宮付近でとある人物と出会い、R49との交差点まで北上し、R49を使って北陸へと戻ったのである。
 つまり、R4は既に、南3分の1を走っているということだ。今日と明日でR4を南下し、R49を使って去年と同じように北陸へ戻る。これをR4の制覇と考えているのだ。
 ちなみに、東北自動車道は、埼玉県は川口ジャンクションから宮城県の最北付近まで往復したことがある。高速道路など、いわば飛行機と同じだ、地に足を付けずに進んでいるようなものだ。時間と距離を稼ぐにはもってこいだが、けちくさい俺には似合わない。意味がわからない。
 R4は青森市から少しだけ北東に流れ、その後延々と南下を続ける。俺は聞き飽きた音楽CDを止め、AMラジオを付けた。
『……なんちゃら自動車道でバスジャックが……』
「物騒だ」
「うーん」
 午前4時に道の駅三戸(さんのへ)を過ぎてからも、ラジオからは緊迫した状況を伝える話が続いた。
 午前2時の道の駅浅虫(あさむし)は、とても寂しかった(汗)車の台数は、温泉があるのでさすがに多かったのだが、真っ暗な駐車場、小さな光の寂しい看板があるだけだった。明るい時に通ればまた違うものが見えるのかもしれない、別の機会にまた訪れよう。
 道の駅七戸(しちのへ)に着いたのは午前3時だ。看板の右側は、その手前のボタンを押すとぐるんと板が回り、違う看板を見せてくれるのだ。もちろん俺は押した。だが、電気が入ってなかった(涙)。
「つくねさん、いい味出してるよっ!」
「どやかましい」
 話は変わるが、2001年7月以来、俺は二度と道の駅七戸には立ち寄らないことにした。ただの余談だ。
 合わせ技で9敗目。

 そうして、ひたすら南下を続け、午前5時過ぎ、ラジオからは興奮したアナウンサーの声が流れてきた。
『あ、発煙筒が投げ込まれました!』
『強行突破しました!』
『わーわー……』
 ついに、バスジャックの犯人が捕まったのである。
 俺の記憶には、客の一人が犯人によって殺され、違う日の会見で運転手がその結果に対して頭を下げていたというのが残っている。
(あんたが悪いんじゃないって……)
 俺は実は、人が殺されてしまったことについてはこの会見のニュースを見て初めて知った。当時のラジオのニュースではそのことについてはしばらく触れられなかったのだ。
 犯人は…… ガキんちょか(汗)
「世知辛い……」
「つらい話だね」
 しばし無言の運転が続いた。


 午前7時。あれから一切の休憩なしで盛岡市を抜けた。花巻市から東隣の稗貫郡(読めん(−−; →ひえぬきぐん)の、道の駅石鳥谷(いしどりや)にせらちゃんを停めた。
「ん、少し休むんだね。お疲れさま♪」
「っ!? あ、あぁ」
 どきっとした。いや、確かに、白衣を羽織っていたつくねにも驚いたが、
「何されるんじゃ!?」
 とも思ったが、そうではなく。
 首を少しだけ傾げて不思議そうに俺を見るつくね。俺は、自分が高揚していると気が付き、背もたれを倒して慌てて毛布をかぶった。
「じゃあ、わたしは少し外で遊んでくるね」
「ん、鳥、いじめんなよ」
「いじめないもん!」
 つくねはせらちゃんを降りていった。俺は…… 妙な意識、違和感を持ったまま、眠りに就いた。


 1時間後。8時ちょうどに俺は目が覚めた。正確には、暑くて寝られなかった、というところだ。思った以上に汗をかいていた。
 俺はせらちゃんのエンジンをかけ、エアコンを付ける。窓を開け、トランクも開けた。つくねは……向こうの道の駅の看板を眺めていた。
「あ、おはよう」
 もう白衣は着ていなかった。白のカーディガンにクリーム色のロングスカート。それとも、寝る前にはこれを白衣と見間違えたのだろうか?
「今日も暑くなりそうだよー」
「そのせいで起きたとも言う」
「あはは☆」
 タオルで汗を拭う俺を見て、にこにこと笑うつくね。
 ……どきどきしている。俺は不覚にも、もしかして。
 つくねに惚れてしまったのだろうか……。
「筑音さん、汗臭い」
「はっはっは 今それを考えていたんだ。人に会うんだから、風呂入ろうと思った」
「うん、じゃあ行こうよ」
 そう、今日は仙台市で、これまたインターネットで知り合った友人に会う予定だった。先ほど高速道路で宮城県にやってきた、というその人だ。今は仙台市内で働いており、少しお邪魔することにしていたのだ。
 俺は、べとべとになったTシャツを着替え、ハンドソープを取り出して腕と顔を洗った。洗顔フォームのような、そんなかっこいいものは持っていない(爆)

 進路は、南だ。


 それから100km。宮城県は古川市に入った。
 あっという間に2時間以上が過ぎてしまったが、国道沿いに大きなお風呂屋さんが見つかったのでそこに入った。湯船にゆっくり浸かり、しっかり身体を洗う。札幌からなので2日と経っていないのだが、運転を続けているだけで思う以上の汗をかいているようだ。
 話は変わるが、大きな浴場には、シャンプーやボディソープが設置されているところが多い。旅をしているこちらとしては嬉しいことだ。設置されていなければどうするか? まぁ携帯用を持っていれば良いのだが、まともに持っているのはお気に入りのハンドソープだけで、その都度そこでシャンプーセットを買っている。毎日お風呂に入るような、しずかちゃんタイプの人から見ると抵抗あるだろう……。

 まだ昼前だと言うのに客は多い。
 つくねは、早めに上がったのか、俺が「男」ののれんをくぐった時には既に畳の休憩所でくつろいでいた。
「あ、ごめん、まだ髪乾いてないんだ」
「いいよ、もう少しゆっくりしようぜ」
 髪に黄色のタオルを巻いたまま俺に話しかける。俺はその横にどっかと座った。ごろんと倒れ、背中を畳に押しつける。イグサがの香りと、これはシャンプーの香りか…… が漂っている。
「なぁ」
「ん?」
 俺はつくねに質問した。
「なんで、お前は、俺の車の助手席に乗って、一緒に動いてるんだ?」
「なんでって…… 旅行記のシナリオだから?」
 そうじゃない(^^;
「なんでって…… さぁ?」
「さぁ、って」
 今までなんとなくタイミングを逃して聞けなかったことだった。しかし、つくねは自分でもよくわかっていないようだ。
「なんで他の人には、お前が見えないんだ?」
(そういう設定だからです(−−;)
「まぁ空が飛べるとか、新幹線より速く走るとか、そういうことは置いといたとしてもな、お前が俺と一緒にいる理由はないんじゃないのか?」
「そんなこと言わないでよ」
 つくねはムッとした顔つきでこちらを見た。
「筑音さんが望んだから、わたしはここにいるの。筑音さんのためにここにいるの」
 なんだそりゃ。といつもなら言い返すのだが、今日は何故か反論できない。
「とにかく、わたしはあなたにとって、あなたはわたしにとって、大切な人なの。友情でも恋愛感情でもなく」
 さいですか…… ショックを受ける俺。
 つくねが寝転がったままの俺の顔をのぞきこんだ。

(わたしは、あなた自身なのだから)

 何かが俺の頭に聞こえたような気がした。よくわからなかった。
「そろそろ行こうよ」
「あ…… あぁ」
 つくねが横で立ち上がる。俺は起きあがった。手を組んで、んーと伸びを入れる。清潔になり、幾分体力も回復しただろう。俺は右腕にぎゅっぎゅっと力を入れてみる。足取りも軽い。
 俺は風呂屋を後にした。


 午後3時。仙台市に入った。友人はある割烹、料亭のようなお店で料理長のような仕事をしている。主に海鮮ものを扱っている。俺はせらちゃんを近くのパーキングエリアに停めると、その店を訪れた。土産を渡し、その後作ったばかりの料理をごちそうになった。まともな食事が少なかっただけに感慨深い(笑)。
 話は尽きなかったが、店は夕方、お客さんの入りが多くなった。これ以上長居するわけにはいかず、俺は礼を言って店を後にした。建物の前にはお客さんを呼び入れるひとりの従業員がおり、挨拶をしてその場を去った。


 そして、南に下ること、およそ3時間、21時を過ぎた頃だ。
 先ほどの料理の消化も終わった頃で、良い眠気が俺を襲ってきた。
 福島市を越え、道の駅安達。今夜はここでゆっくり眠ることにした。
「もうすぐ4号線も、クリアだね」
「そうだな」
 R4は、もうまもなくでR49との交差点になる。俺はそれを西に曲がり、新潟県を経由して金沢に戻る予定だった。
「もうすぐ4号がクリアになる。今回の旅路で、何本クリアしたことになるんだっけ?」
「えーと、新潟までで8号、青森までで7号でしょ」
「函館から札幌が5号、旭川まで12号、稚内まで40号、か」
「それに4号で、合わせて6本だね」
「こうして、また一級国道制覇の道が増えていくんだよな〜」
「目標のゴールが、また少し近付いてきたんだよね」
 俺はうなずいた。まだまだ先は長いが、ひとつ長距離の旅が終わるたびに、走行距離はどんどん増えていくのだ。
 金沢を出発して、ここまでの走行距離は3000kmだ。6日間なので、一日平均500km、幾分予想していた距離数よりも大きい。
「この分だと、明日の夕方にはちゃんと金沢に着けそうだな」
 俺はシートを倒し、毛布をかぶった。
「明日も気合い入れて行こうね」
「あぁ、そうだな……なぁ」
「ん?」
「ありがとうな」
「ほえ?」
「いろいろ」
「あはは(^^;」
「おやすみ」
「うん、おやすみ」
 俺は、目を閉じた。
 そのまま、深い眠りに入った。


章末。
 さて、ようやくここまで来ました、シナリオ作りがめちゃくちゃ疲れました(^^; 思ってたより、写真少ないし……。
 仙台市を離れてから、また休憩することなくひたすら走り続けました。ゴールデンウィークとはいえ夕方なので4号バイパスもそれまでより流れが悪く、とろとろと走っていたようです。
 んで、まぁ。6時間睡眠の予定で、早朝3時半に目覚ましをセットして、出来るだけ早いうちに新潟の混む道を越える予定だったのです。
 前の車、トゥディの時には、栃木のトラックにぶつけられて気分の悪いまま走ったR49ですが、今回はゆったりのんびり走れそうです。
 金沢まではまだまだあるのに、こんなあたりから「帰路」って言葉を使うのも、もう抵抗なくなってます(^^;



第10章  気づけば君は

 午前3時半。俺はPHSの目覚ましによって目が覚めた。いつもならそこでまた眠ってしまうのだが(^^; 道の駅の駐車場を、白黒の体に赤の帽子をかぶった車が徘徊していたためにそこで目が覚めたのだ。
「おはよう、今日はいい天気だよ♪」
 湿度の高いせらちゃんの窓を全開にする。エアコンをかけて除湿し、外で軽く体を動かす。4時前なので薄暗いのだが、雲はあまり見あたらない。
 つくねは助手席のガラスの上に地図を置いてそれを見ていた。淡いピンクの薄手のシャツと、足のラインにピチッと合ったグレーのパンツだ。ネクタイのようにシャツの首には紐を巻いてある。引っ張ったら絞まりそうだ。
「しないでね」
「だーかーらー、心を読むなって! ……それにしても、朝から気分悪いもの見たなー」
「ふふっ、朝っぱらから、車のナンバーチェックしてるの見ると、気分悪いよね」
「むむー、早く行こうぜ」
「はいはい」
 俺は、つくねを促し、駐車場を後にした。4時半を過ぎていた。


 R4をクリアした。R49を、新潟方向に進んだ。
 確かにクリアはクリアなのだが、いまいち盛り上がりにかけた(@▽@;
「♪くりあ〜」
 なんかふりゅ茶(うちのチャットルーム)のログ消去みたいだ。というかそのものだ。


 午前7時半。道の駅三川(みかわ)に入った。駐車場だけを見るとそれほど大きくない。あれは……武将を思い出す。
 その10分後。道の駅阿賀(あが)。3km先にあったのだが、こっちはかなり大きい。
「こんな山の中なのに、魚市場とは驚きだ」
「産地直送」
「意味がわからない」
 ひとつの店も開いていない道の駅を後にした。


 R49を西に走ると、新潟県は五泉市(ごせん)に入る。ここでR49を離れ、山道を突っ切ってショートカットするのだ。
「去年の2月の帰りは、雪で埋まってたよね〜」
「……そうだ、Uターンを余儀なくされたんだ。せっかく一番上のほうまで荒れた雪道を走ったのに……」
 俺は口を歪める。
「って、だからなんで知ってるんだって!」
「ふふふ♪」
 つくねはにこにこ笑っている。
 なんとなくわかった。つくねが、俺のことをいろいろ知っている理由。心を読める理由。空を飛べる理由。戦車よりも強い理由。
「なんなのよそれは(^^;」
 あらためて、つくねを見てみる。
 ……ほら、思った通りだ。
「何が?」
 俺の、好みそのまんまだ。


 新潟県は長岡市。R8を直進すると、R17となる。R17を直進すると、長野の山へと向かうことになる。いったん左に降りて、右折しなければならない。
 ほら、曲がり損ねた(爆)
 看板を見落としただけだが……やるような気がした。変な話だ。
 別の道を使ってR8に復帰する。ふぅ、やれやれだぜ。

 海沿いの道をどんどん南下する。柏崎、柿崎、上越、名立谷浜。
 間もなく、道の駅能生が見えてくる。
 と、せらちゃんを、1台のシルバーのセリカが追い越していった。片側一車線の狭い道だ。前は確かに遅い。50km/h制限の道を、50km/h程度で走っている。イライラするのだろう。俺はそれを見送った。事故んなよ〜 と。

「事故ってるし(−−;」
 玉突き事故だった。4台。白の乗用車(カローラかな?)、軽トラック、セリカ、そして赤の……なんだったかわからないが、一番前の白の乗用車が対向車線にはみ出して止まっており、そこに後ろの3台が順番に追突していた。少しオイルかガソリンが漏れたのか、潮の香り以外の臭いも混じっていた。
 俺は、事故のせいで通行止めをくらったらたまらん、と、前の車に続いてそれらをやりすごした。対向車線を走る……走った時に、その4台を確認したわけだ。
 対向車線は、大渋滞だった。


 そして。親不知インターチェンジを越え、次の道の駅が見えてきた。
 市振の関。
 俺が、つくねに出会った場所だ。変な話だ。井戸の中にいるなんてな。
「なぁ、立ち寄ろうか……」
 俺は、助手席にいるはずのつくねに話しかけたが、言葉は途中で止まった。
 つくねの姿はなかった。
 その代わり、助手席には紙が1枚たたんで置いてあった。俺はすぐにそれを手にとって広げた。

『楽しかったよ またね』

 丸文字で、ただそれだけ書いてあった。
「……俺の字だぜ」


 無言で、R8を走った。富山県は小杉市。PHSの着信音が鳴った。自宅の番号だ。
「今どこ〜?」
「小杉」
「もうそんなとこなの?」
 母だった。
 12時半頃だった。ここから自宅までは約50km。うまくいけば1時間半ほどで到着する。
「2時くらいだわ」
 俺はそう告げると、オンフックした。あと少しだ……。

 いや、のどが渇いたな。途中の自動販売機でジュースでも買うか。
 ……アク○リアスレモンがないな。どうしようか?


 悩んでるうちに、地元に到着(爆)いや、実にのどは乾いている。
 しかも、自宅に到着してから気が付いたのだが、宮城県内で買ったはちみつ牛乳の紙パックが2つ、後ろ座席に放置されていた(==; これ飲めば良かったんだ…… すっかり忘れていた。
 10敗目を喫した。




エピローグ

 帰宅です。長い旅路に終止符を打ちました。6日半のドライブを終え、たくさんの荷物をせらちゃんから下ろしました。
 1日目、金沢から青森へ。850km。
 2日目、大間から函館へ、そして札幌へ。450km。
 3日目、旭川を経由して稚内へ。450km。
 4日目、札幌市内を歩く。400km。
 5日目、函館市内を回る。300km。
 6日目、青森から福島へ。500km。
 7日目、2つの道の駅以外はノンストップで金沢へ(^^; 500km。
 総計、3500km弱。お疲れ様です、自分…… 旅行の走行距離、去年の夏の高知・山口5日間を1000km越えました。
「7日で3500kmって…… こんなもん、もう更新できんぞー」
 と当時は思ってましたが、これを書いている今(2002年7月現在)、せらちゃんでの北海道3回目の旅、10日間、5800kmは、もう更新したくありません(^^;;;

「つくね」も「筑音」も、どちらもわたしです。ふたり合わせて本当のわたしになるような気がします。わたしがどんなヤツなのかというのが、これでわかるかと思います(^^; ただ、心の中にはさらに「もう何人かの自分」がいて、いつも外に出る機会を窺っていたりもするのです……。
 その後も、筑音とつくねは、何度も一緒に旅をします。いえ、わたしが旅を続ける限り、きっとずっと。
 テキストファイルにして、最初の目標サイズ30kBを大きく超える112kB(自滅)すさまじい旅行記だな……(−−;
 長い旅でした。長い文章でした。
 お付き合い、どうもありがとうございました(^^)





つくね「はいはーい、つくちゃんから、お知らせだよー♪」
筑 音「終わったと思ったら、なんなんだいったい……」
つくね「パスワードをメールで送っていただいた方には、差分ファイルをプレゼントしまーす」
筑 音「そんな話聞いてないぞ(汗)バグ取りした修正版じゃないだろうな?」
つくね「違うわよ(;;)」
筑 音「じゃあなんなんだ?」
つくね「内緒♪(たいしたことないし……)」
筑 音「おい」
つくね「いいから。ほら、忘れてるじゃない、第1章で言った話」
筑 音「あぁ、ワイパーのびびりについての話だな。ここで話しておこうか」
つくね「せらちゃんのワイパー(助手席側)は、実は湾曲タイプだったのです。微妙に円弧を描くブレードに、まっすぐなワイパーゴムを交換したのでした」
筑 音「という理由だ。なので、曇り止めでびびりがなくなったのは、気分的な結果だと考えられる」
つくね「どういう意味よ?(^^; まぁいいわ。そしたら、次、行くね。第2部〜」
筑 音「まぁ、番外編みたいなもんだな」

第2部
バカ企画 〜JR東日本編〜
(ここではリンクのみとします)

つくね「写真ころころ変わっていくだけじゃ、面白くないよね〜」
筑 音「まったくもって(−−; 『ここは行ったことあるわ』とか、『オレんちこの近くだぜー』とか、そんな程度で見てもらえば、さらさらっと終わるんじゃないでしょうか?」
つくね「旅行記、思ってた3倍以上だもんねー」
筑 音「お茶漬けでさらさらっと流すようなもんです」
つくね「さて、今度こそ、おしまいですね」
筑 音「あ、そうそう。写真だけなら、インストールCDにそのまま放置されていますんで、適当なビューアーで見てみるのも良いかなー、とも思います」
つくね「著作権は放棄していません。個人的にウィンドウズの壁紙にするなんてのは嬉しいのですけど、その他販売や配布の目的でのコピーや紙への印刷などはやめてください」
筑 音「難しい話だな……」
つくね「システム(エンジン)の動作確認にお付き合いいただいた皆さん、どうもありがとうございました」
筑 音「DTP担当のあおいくん、ありがとうっす」
つくね「このプログラムは、VisualBasic 5.0 ServicePack 3 で作成されています。DirectX 7.0 以上必須です」
筑 音「プログラマー&シナリオライター&写真撮影、その他いろいろ、響 筑音がやりました」
つくね「……なんか、順番めちゃくちゃだよ(−−; 作者の性格、疑われちゃうよ」
筑 音「誰のことを言ってるのか、わかってるのか?」
つくね「気にしない、気にしないっ♪」
筑 音「置いてくぞ」
つくね「気にしてよ」
筑 音「……それでは」

 どうもありがとうございました。

→ひとつ前に戻る