観た建築の感想 index

酒田市美術館 池原義郎・建築設計事務所
酒田市美術館は浅蔵五十吉美術館と兄弟のような関係にあると思います。浅蔵の方は敷地に制約があったので水盤を設けて庭を建築に取り込んだような設計になっているけど、酒田の場合は、広い芝生の庭に開いた感じです。浅蔵の場合は単体の建築としてまとまっていますが、酒田は、デンマークのルイジアナ美術館のように自然に埋もれているように広がり全体像は把握できないような感じです。浅蔵は建築費があまりなかったのだと思いますが、壁仕上げがクロス貼りです。池原氏の細かいディテールに接着剤がついていけず、クロスがはねてしまっている部分が眼につきますが、酒田は石・コンクリートなど素材で壁を造っているのでディテールまで美しく仕上がっています。一番奥の常設展示だけはクロスでしたが・・・。
酒田では、彫刻の展示方法に感心しました。出目地のコンクリート壁に開いた開口から外部にガラスのDTP工法でちょっと振った箱をつくり、彫刻を展示しています。そのガラスの外には(人工的な自然には見えないような)自然が広がっています。ガラスの屋根に溜まった雨を通して入る光も面白かった。(も少し水勾配が必要では、とも思うが)入り口やホールで見せた芝生広場という「自然」と、展示と展示の間にある休憩室や彫刻のバックで見せる「自然」を区分けしています。漫然と建物周囲の自然を見せるのではなく、どこで何を見せるかを計算していると言うことです。また、屋外の芝生面や植栽を10人程で丁寧に管理されていたのが印象に残っています。
床の石もかちっとした磨いたものではなく、珍しくざらっとして今回のはいいなと思いました。いつもどおり、ディテールは、やりすぎるほどで、写真撮るのも疲れてしまい、そこまでやるかと思ってしまいます。入り口付近にある公衆便所も「ここまでやるか」って感じ。
浅蔵の方の突き当たりにある大きな両開き戸のフランス落しは気に入ってたのですが、今回は、デザインの同じ扉はあったけど、そのフランス落しは使ってなかったなぁ。

この美術館は、ガラス面から見える景色がポイントの一つになっていると思うのですが、シングルガラスで東北の気候では、冬季間ずっと結露で曇ったままでは、いまいちではないのかと思いましたが、どうでしょうか。建築家の作品では、冬季間のことを考えてあるものは少ないと思います。リチャードマイヤーのフランクフルト工芸美術館では、ガラス面に熱線入りのものが、使用されていました。磯崎氏の中谷宇吉郎・雪の科学館のトップライトは、ペアガラス+合わせがラスになっていて「やるな!」と感心したのですが、そういう建築に逢うことは稀なのですが、勉強不足ですか ? 他にもっとありますか ?
常設展示室2へ入る手前の打放しの壁にクラックが入り、白華が流れていました。
打放しの壁では避けられないことではありますが、現在美しい美術館が今後どうなっていくかを暗示しているようです。漏れを止めるためには、外壁側からのエポキシの注入しかないでしょう。こういうことを考えて前川氏は打放しからタイル打込みにやり方を変えたのですが、また打放しの建築が増えた近年の建築での改修はどうやっていくのでしょうか ?この辺りの問題についての解答はまだ出ていません。何十年か後に分かるのを待つしかないのでしょうか。建築を学ぶ学生や我々のように設計を職業とするものが、建築を観に行ってファッションだけを学ぶのではなく、性能面においても建築を深く学ぶ必要があるように思えます。

ここの喫茶室は、芝生の中に飛び出ているのですが、ちょっとお茶を・・・という時にこういう所で、ってのもいいと思いました。下手な喫茶店に行くよりずっと気持ちがいいし・・・。
ところで、東北って喫茶店が少ないのですが、何か理由があるのかな ?
今回、車で走っていてもお茶するところのないのに驚いたのですが、東北の人は、堅実な方ばかりで家に帰ってお茶するのでしょうか ?
いずれにしろ、酒田市美術館と浅蔵五十吉美術館の両方を見学することをお奨めしたいと思います。
住所と名前を書いて事務の許可を貰うと、腕章をかしてもらって美術品以外の撮影OK

地図
平面図
案内板
左側に美術館、右側に便所、正面方向に土門拳記念館
アプローチ
壁は出目地
壁を挟んで左がアプローチ、右が美術館
入り口の・・・・これなんて言うの ?
キャノピー
この部分の金属工事代だけでもすごいよね
キャノピー+ドア
キャノピー詳細
ステンレス加工
入り口の壁をくぐってからのアプローチ
ず〜っと、ず〜っと歩いて行って右に折れるとエントランス
アプローチ見返し
エントランスキャノピー
左に見えるのがショートカット用の入り口
キャノピーの柱頭詳細
メカニカルな感じがカッコイイなぁ
アプローチが長いのでショートカットするための入り口
柱にくくりつけられたプラスチックの仮設の館名表示が悲しい
傘立て
床に水受け用の彫り込みがある
殆どの場合傘立てをデザインしても数が足りなくなって既製品のが置かれることが多いけど、この美術館は大丈夫でしょうか
上記詳細
写真ではよく分からないけど、DTPでつくられたガラス屋根部分に雨水が溜まってそこに陽の光が当たったところが綺麗でした。水が溜まることがよくないと言う意見もあるでしょうけれど・・・
芝生の広場に飛び出た感じの喫茶室。エントランスホールの正面にあります
壁ディテール
芝生側のカウンター
「あー、どっこいしょ。いい眺めだよ」と・・・山形弁だからよく分からなかったけど、多分そんなようなことをいっていた、二人のお年寄り夫妻
エントランスホールから受け付けカウンターを観る
花のような可憐な印象の照明器具
照明器具頂部
受け付けカウンター
常設展示室2の入り口ドア
スチール+焼き付け塗装
これ幾らだ一体 ?
アプローチ部分にあったのは同じデザインのステンレス製でした
常設展示室2までの渡り廊下見返り
スチールドアのフランス落しをきちんと降ろさず開閉したのでしょう。天井に傷が・・・・
展示室天井
浮いたように見えます
斜材間に入っているパンチングメタルは構造的に必要なのでしょうか ? 
常設展示室2までの渡り廊下外部の庭
笹がびっしり植えられています
芝生広場から美術館をのぞむ
手前は安田侃氏の「翔生」
トイレは天井からの間接照明だけ
展示室間にある休憩室
休憩室を外部から観たところ
休憩室
自然をバックにした彫刻の展示
今回の美術館のテーマの一つだと思う
ガラスの箱をちょっと振って躯体から飛び出させたところに彫刻が置かれて一枚の画のようです
常設展示室2の手前にある彫刻の展示
左上の躯体から白華が流れている
常設展示室4付近の彫刻の展示
屋外の公衆便所
写っているのは芝生の手入れをしていたおじさん達
男子便所
明るいしいい感じ
天井の木を張っているのは苦労した感じが伝わってきた
奥の方が女子便所
男子便所入り口
コンクリート壁の笠木納まり
オープンなのがいいと思う

Strayt Sheep index 観た建築の感想index