泊まったホテル 倭乃里(わのさと) index

1999/12/11・12 岐阜県大野郡宮村1682 tel 0577-53-2321

建築士会連合会賞の副賞が 30万円。税金を引いて手取りは27万円。・・・こんなものから税金を引くなよ〜って感じですが・・・

何に使おうかなぁ〜っと考えていたのですが、金額からして最新のパソコンにしようか・・・でも、何を買ってもしっくりいかないような気がするし・・・。物ではなぁ・・・。いくら久しぶりの収入だとはいえ、生活費にするにはちょっと悲しいようにも思えて・・・後で何に使ったかも思い出せなくなってしまうし、第一、記念にもならない。これじゃぁ、正しい賞金の使い方でもないでしょう。

・・・で、今回受賞した建物の建築主、あ〜んど、施工者である谷口氏の家族4人と僕たち二人、計6人で一泊の温泉旅行でぱぁ〜っと使ってくることにしました。今回は、建築主と施工者が同じだったので助かった。でないと持ち出しだ〜。

週末に岐阜県の高山にある『倭乃里』という旅館に行くことになりました。藁葺き屋根の離れを借りて二家族で遊んでくるという計画です。

母屋は40年位前に神岡から、離れは近郊の民家を移築したものだということです。我々が泊まったのは『臥龍』という離れの一軒家です。藁葺き屋根・・・って思っていたら違っていてちょっとがっかりだったのですが、6人が宿泊できるのはこの部屋だけだということで・・・。でも、帰る前に藁葺き屋根の方を探検してきたのですが、別に吹き抜けているわけではなくて、外観だけの藁葺きだったので『臥龍』にして正解でした。いろりが付いているのはここだけですし・・・。夏ならいろりは要らないのでデッキが付いている『天領』がいいでしょう。

門をくぐって母屋まで歩いていくと、いろりの脇にはもうお茶の用意ができていて『どうぞ』・・・と。あれれ〜、僕たちが到着したことがどうしてわかるわけ ???って。門にセンサーが付いていて、母屋に到着するまでにお茶の用意が整うというわけ。いいよね。こういうのって。お茶をいただきながら宿帳に名前を書いてとりあえずくつろがさせて貰います。

それから離れの方に・・・。

寝室12帖プラス床の間付きの和室+水屋も付いた茶室+茶の間+24時間入れるヒノキ風呂+トイレ+洗面脱衣所+いろりのある広い板の間+玄関という構成の平屋を借りたわけです。おぉ、何と贅沢な・・・。これで大人一人36,000+4歳の子供は施設使用料として3,000でした。これにプラスして消費税です。和室には床暖房が入り、いろりには炭が赤々と・・・。三部屋にはストーブも焚かれ暖かくていたるところに生花も活けられていい感じです。よ〜く探検してから気付いたのですが、うちよりも広いようです。

母屋の浴室は木と石の二つあって男女が入れ替わります。川の景色を見ながら入浴できます。石のお風呂は温泉と水に分かれているのですが、女将さんによるとお湯と水の両方があるのが風水上いいんだとか。でも木のお風呂は温泉だけだったぞ ! なぜだ〜。
離れの浴室の方がヒノキの香りを楽しむことができました。

夕食は母屋の赤壁の部屋で、朝食は広間でいただきました。夕食が個室だった(6人だからか ?)のはラッキーです。分厚いヒノキのテーブルでとる夕食はイチイの実でつくった食前酒から始まり飛騨牛の鉄板焼きなど多彩でおいしい食事でした。多分、他の離れの方は朝食をその部屋でとられたのでしょうか ? しかし、朝、景色の見える・・・うっすらと雪景色の川を観ながら・・・広間で、夕方、部屋を楽しむ個室で・・・の組み合わせだった私達は運が良かったようです。夕食の後『イチイ』でつくったというお箸のプレゼント ? もありました。

夕食が終わって離れに帰ろうといろりのある玄関にでてみると、宿泊者の皆さんがいろりを囲んで振舞酒を飲んでいました。割竹に入れたお酒を囲炉裏の火で燗をして竹を輪切りにした猪口でいただくのです。僕たちも仲間に入れて貰って飲み始めてしばらくしたときに、そのお客さん達の一人が近寄ってきて『長村さんですか ?』と。あぁ、とうとう僕も有名な建築家になって知らない人から声をかけられる様になったか・・・出世したもんだ・・・と、ぼんやり酔った頭で思っていたのですが、んなわけないじゃん。

彼は大高事務所の現在の所員だとのこと。先日事務所に行ったときには、面識のない所員の方に声をかけにくくて話をしなかったうちの一人だとのこと。声を覚えていてくれたらしくて、谷口さんと話す内容で確信を持って声をかけてくれたそうです。彼、OTM氏は奥さんの誕生日ということで夫婦で宿泊しに来たんだって。それを聞いた和泉は『よ〜く、耳の穴をかっぽじって聞いておきなさいよ !』って僕に言っていたけど、酔っていたのでもう忘れた。・・・で、そのOTM夫妻と名古屋からのFGK夫妻を交えていろいろ話が盛り上がりました。

その後、OTM夫妻は母屋に泊まっていたので、どうせなら離れを観る ? ってことで、離れに戻って飲み直し・・・。夜が更ける毎に酔いは増していくのであった。

次の朝、11時のチェックアウトぎりぎりに、他の離れの部屋を探検してから帰りました。トータルでかなりお得な料金設定だと思います。そういえば名古屋からの夫婦はもう5年くらい毎年リピーターとして宿泊しているとのことでした。年輩の夫婦の方も帰られるときに『来年は・・・』という話をされていたところを観るとリピーターなのでしょうね。

お奨めとしては、冬は『臥龍』、夏は『天領』でしょうか ?
至る所に生花が活けられ、暖房もフルに焚かれていて、振舞酒もあったりしてかなり満足のいく旅館でした。8組しか宿泊できない旅館ですから、あの価格では破格ではないでしょうか ?

建築賞のお祝いに相応しい一泊二日の旅行でした。建築を観ないで宿を楽しむ旅行って初めてかも知れません。


 
40年前に神岡から移築したという母屋前景。
4棟ある離れのうちの三棟。僕たちが宿泊したのは手前の平屋建てです。奥の藁葺き屋根はどうも格好だけのようでした。中に入ってみると天井が張ってあったもんね。
一夜明けるとうっすらと雪景色でした。この離れのすぐ脇を巨岩がごろごろした川が流れていて、そのせせらぎを聴きながら落ち着いたひとときを過ごすわけです。贅沢だよね〜。
藁葺き屋根の離れには干し柿が・・・。本来なら雨が掛かりにくい軒先に吊すはずですが、私達の泊まった茶の間から見える位置に干してあるのです。
私達の泊まった『臥龍』の玄関から囲炉裏のある板の間を観たところです。左が水廻り。正面が茶の間。右奥に茶室。右手に和室があります。
茶の間からの眺めです。他の三棟は川に面して茶室があります。
母屋を入ったところにある囲炉裏。今風に言うならエントランスホールです。天井や梁は煙で燻されて黒光りしています。
囲炉裏からフロント(正面奥)を見たところ。ここに座って一服していると『コーヒーでも如何ですか ?』と声をかけてくださいます。サービスのようです。
朝食後、温泉に入った後、谷口夫妻(左)と一服。
赤壁の部屋で夕食を頂きお祝いの乾杯 ! ヒノキの分厚い一枚板でできたテーブルを二つ組み合わせて・・・。食事をとるのに夢中で写真を取り損ねてしまいました。順番にサーブされるからどちらにしても全てを並べて撮るわけにもいかないけれど・・・。左下が囲炉裏のある玄関ホールです。

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